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□雪ノ降ル日A
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雪ノ降ル日
【主劇:武市半平太】
「こら。そんな薄着では風邪をひくよ。」
縁側で庭を眺める彼女に羽織を掛けてやると、大きな瞳をくるくるとさせて見上げてくる。
その愛らしい瞳に、口で咎めるも頬が緩んでしまう。
「・・・ありがとうございます。」
そう言って再び庭に視線を戻すから、ついこの景色にさえも嫉妬してしまう。
「そんなに雪が珍しい?」
すると嬉しそうに微笑んで目を一層輝かせた。
「はい。私の育ったところでは、降ってもあまり積もらないので。」
彼女の白い頬は、ほんのり桃色に色づいていて一層肌の白さを強調させた。
「ほんとうに、かわいらしいね。」
彼女の瞳が、驚いたように僕を捕えて、そしてゆっくりと細められる。
「半平太さんの発想には、いつも感心します。」
・・・発想?
感心?
ふむ。僕は素直な感想を言ったまでなのだが。
「雪がかわいらしいなんて・・・」
今度は僕が驚かされる。
彼女の鈍感さに。
「あはは。本当に敵わないな。」
「半平太さん?」
不思議そうに首を傾げる彼女に、溜息が漏れた。
この雪が溶ける頃
僕の気持ちは 彼女に伝わるだろうか。
幼い彼女の頭を、そっと撫でつけながら
まだ今はこのままで。
彼女を見守るのも悪くないか・・・
心の中でそう思った。
〜初雪の日に書き上げたものです〜