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□ハッピー☆ホワイトデー
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 ハッピー☆ホワイトデー





「待ちやがれっ!!」


やばい。ヤバすぎるよっ!!

浅黄色の隊服に追われ、全速力で街を逃げ回る。

何で今日に限って見廻りの隊士が多い訳?!

路地の物陰に隠れて、乱れた息を整える。

龍馬さんにお遣いを頼まれて、寺田屋を出たのが一刻程前の事。

すぐさま新撰組に見つかって、必死になって逃げ回る。

・・・もう、体力の限界。

へたりとその場に座り込んで、額の汗を拭った。


遠くでピィィィィっと笛の音が聞こえる。

・・・また隊士を呼ばれた。

これ以上、増やされたらたまったもんじゃない。

一度、大きく息を吸い込んで、力の入らない足でふらりと立ち上がる。

とにかく、遠くへ逃げなくちゃ。

街の大通りに背を向けて、一歩前へと踏み出した。


「おいっ!」


ぐいっと腕を掴まれて、そのまま体がふらりと倒れる。

目の前には浅黄色の隊服。


――― 新撰組?!


「・・・いやっ!!」


反射的に身を捩らせ抵抗するが、思い切り引き寄せられて動きを封じられてしまった。

「大人しくしてろ!」

「やだっ!!・・・・っ!!!」

後ろから羽交い絞めにされ、口元を塞がれた。

恐怖に震え、それでももがき逃れようとする。

「おい!暴れるんじゃねぇ!じっとしてろ!!」

隊服が乱れ、隊士の胸元から見慣れたものがふらりとぶら下がる。


あ・れ・・・?

・・・・これって

私が作った御守り・・・・?


「ったく。世話やかすんじゃねぇよ」

ため息交じりに言う彼は・・・・

もしかして、土方さんなの?


「・・・おめぇは相変わらずだな。」


やっぱり、土方さんだ。

抵抗する体の力が一気に抜けて、そのまま土方さんに身体を委ねた。


土方さんは新撰組で。

しかも鬼の副長さんで。

本来なら一番逢っちゃいけない人なのに・・・。

逢えて嬉しいと思ってしまう。


私が抵抗しないとわかると、土方さんは私の口から手を離してくれた。

「土方さん・・・」

振り返ると、面倒臭そうにため息をつく彼。

「やっと捕まえたぜ。おめぇはうろちょろし過ぎだ。」


・・・私、屯所に連れて行かれるのかな。

そしたら龍馬さん達の事、聞かれちゃうよね。

だったら・・・


「今すぐここで斬ってください。」

「はぁ?何言ってんだおめぇは。」

眉を吊り上げる彼に、私は言葉を続けた。

「だって、屯所に連れてかれて拷問されるんでしょう?だったらここで斬って下さい。私、何も話す気ないですから。」


冷たく、背筋が凍るような目つきで睨まれる。

やっぱり、斬られたら痛いんだろうな。

・・・怖い

思った瞬間、体が震え始めて思わず目をぎゅっと瞑った。


「はぁぁっ・・・斬らねえよ。屯所にも連れていかねぇ。安心しろ。」


・・・え?

顔を上げると、手ぇ出してみろと土方さんが言うから、私は素直に手を差し出した。

すると手の中にころんと乗せられる。

貝・・・?

「きれい・・・」

「紅だ。ちったぁ女らしくなるだろ。」


あ・・・///

貝を開けて、紅を指に取り唇に乗せられた。

唇を指になぞられて、顔が火照ってしまう。

土方さんは満足そうに目を細めて、頭を撫でてくれた。


「な・・・んで?」


なんで、突然こんな事をするんだろう。

なんで、優しくするの?


「今日は。コレの礼をする日なんだろう?」

土方さんは、首からぶら下げている御守りをひょいっと持ち上げてみせた。

私が、バレンタインに土方さんにあげた御守り。


あぁ、そっか。今日は3月14日。

ホワイトデーだ。

・・・って、ちょっと待って。

「なんで、土方さんがホワイトデー知ってるんですか?!」


土方さんが、ホワイトデーなんて知る訳がないのに。


「坂本が!のこのこと俺の前に現れやがって。14日はほわいとでーだからおめぇに礼をしろとよ。全く坂本は何を考えていやがる?追われる人間が負う人間の前にわざわざ出てくるなんざぁ。捕まえてくれと言っているようなもんじゃねえかっ!しかも、一度ならず二度三度と現れて、言いたい事行って逃げやがって」

イラっとした顔つきで、土方さんは早口で言い切った。


「龍馬さんが・・・・」

今日、お遣いを頼んだのも龍馬さんだ。

最近は新撰組の見廻りが多いから出歩かないようにって言われていたのに、今日に限っておかしいなと思ってたけど。


・・・そっか。龍馬さんが・・・


「ところでおめぇよ。この中に入ってる穴の開いた石は何だ?」

土方さんが、私の目の前に御守りを持ち上げてみせる。

御守りの中には、私の手紙と五円玉が入っている。

見ちゃダメって言ったのに、土方さんはすぐ見ちゃったんだよね。

「五円玉っていって、未来のお金です。土方さんとまた逢いたいから・・・ご縁がありますようにって・・・まあ、会ったら捕まっちゃうんですけどね。」

冗談っぽくあははっと笑うと、とてつもない大きなため息をつかれてしまった。


「・・・お前と居ると、調子が狂っちまう。」

「何か言いました?」


くるくると光る大きな瞳に、土方は再びため息を付いて、くしゃりと頭を撫でてやった。


好きなだけ逃げ回れよ。

   いつだって捕まえてやるからよ。



〜〜〜ホワイトデーSS〜〜〜

ホワイトデーに乗せる筈だった作品です

(´Д`。)グスン

残念ながら 随分と時期外れになってしまいましたね。。。

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