琉千彩

□〜ぷろろーぐ〜
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最初にここに来たときは・・・

確か・・・以蔵

そう、以蔵が・・・私を庇って命を落としたんだ・・・。

・・・そして、ここにいては危ないからって、慎ちゃんがあの神社に連れて行ってくれて・・・

嫌がる私を無理やり未来に還した・・・。

途中、何度も新撰組に襲われて、私を庇うために傷を負った慎ちゃん。



最後に見た光景は―――



背後から切りつけられる慎ちゃんの姿。

そして、まぶしい光に包まれて

消え行く私に笑顔をみせて・・・

頬を伝う涙を拭ってくれて・・・



「・・・姉さんは、笑った顔が一番っスよ・・・・・・」



その姿を最後に、私は未来に戻ってしまった。



私のせいで、以蔵は命を落とした・・・・・・・・・。

慎ちゃんも、死んだかもしれない。

私が、過去にタイムスリップしてしまったせいで、皆の運命が変わってしまったのかもしれない。



そんなことを、遠のく意識の中で考えていた。




未来で意識を取り戻した時。

私は一瞬、長い夢を見ていたのかと思っていた。




長くて、長くて

楽しくて・・・

そして哀しい・・・・



そんな夢。



・・・だけど。



私は着物姿のままだった。

右手の手のひらだけに、乾いて赤黒いモノがべっとりと付いていた。

目を閉じると、月明かりの下、私の手を引き、走る慎ちゃんの後ろ姿が蘇る。



・・・これは、慎ちゃんの・・・。



私を逃がすために、慎ちゃんは大きな傷を負った。

それでも私を庇い、手を離すことは無かった。

きっと、走ることなんてできないほどの傷だったと思う。


なのに。

なのに、慎ちゃんは走るのをやめなかった。

私の手を引き、自分の身体を引きずるようにして・・・



「・・・っ!!」



手のひらを胸の前で強く握りしめた。

ギリギリと血が滲むほどに唇を噛む。

涙が頬を伝っていく。

座り込んだまま

体中が震え


とめどなく涙は流れた・・・・





・・・どれだけ時間が経ったのか、わからない。


ほんの数分だったのかもしれないし、数時間だったのかもしれない。






「小娘ちゃーん!どこにいるの〜?!」




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