琉千彩

□第二話
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18××年−−− 寺田屋


【主劇:小娘】



あれから一週間。

小娘は自室の文机に向かい、日記を書いていた。


この一週間で

長州藩の高杉さん、

そして桂さんにも会うことができた。

高杉さんは相変わらず・・・

顔を見るたびに

『俺の嫁になれ!!』

ってそればっかりで。

・・・高杉さんらしいのだけれど。



桂さんも、相変わらずで、

『何か困ったことがあったらいつでも来てくれて構わないからね。』

と、優しい言葉を掛けてくれる。



薩摩の大久保さんにも会うことができた。

失礼な事ばっかり言ってきて・・・

ホントは優しい人なのに。

今回も、我慢が出来なくて言い返してしまった。


思い返すと、大久保さんとの『初対面』は

毎回、言い合いになった気がする・・・。



とにかく、皆とも会うことができたし・・・

今のところは何もなく、順調かな・・・?



ペンを置き、パタンと日記帳を閉じた。


幾度と時空を越えてきた。

記憶の混乱を防ぐために

日記を書くのが日課になった。



確か5回目にタイムスリップした時の事。

あれは最悪だった。
うっかり彼らに無い記憶を話してしまって、めちゃくちゃ不振がられてしまったんだよね。

そんな失敗を防ぐために、毎日おきた事や話の内容を詳しく書きとめるようにしている。


しばらくぼぉっと日記帳の表紙を眺めた。

そして、隣に置かれていた文庫本サイズの本を手に取り、ペラペラとめくる。


かなり読み込んだから、すり減って、ボロボロになってしまった。


本来なら

『まるわかり!ポケット日本史』
『〜幕末維新〜』

というタイトルがついている。

ぐりぐりとタイトルを塗りつぶし、カバーをかけた。

中身を見なければ、歴史書だとは気が付かない。と、思う。


この歴史書は、江戸時代後期、丁度龍馬さんたちの生きた時代の歴史について書かれている。

幕末志士の簡単な説明。

そして細かな事件や年表。


「今のところ、何も問題ないよね・・・」


年表を指でなぞり、ホッと肩の力を抜く。


この歴史書は不思議なものだった。

4度目のタイムスリップで、望んだ未来が無いことに気が付いた私は、一度未来に戻って本屋に向かった。

そこで見つけたこの歴史書に、龍馬さんの名前をみつけた。

笑っちゃうけど、今まで、日本の歴史って全く興味がなくて、龍馬さんたちが、こんなに歴史上有名な人たちだってことを知らなかったんだよね。



最初は気が付かなかったけれど、どうやら私と一緒にタイムスリップすることで

この歴史書に書かれている内容も、年表も、事件も・・・全て変わっていくみたい。



何度か過去と未来を行き来して

歴史書の内容は、私の言動により、変化し、白紙に戻る・・・そして正しい歴史に戻るということを繰り返していた。



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