琉千彩

□第三話
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――― 幕末・寺田屋


「なっ!!武市!!ここで何しちゅう?!」



小娘の部屋の前。

武市は襖に手をかけている。

そこに慌てて駆け寄るのは、言うまでもないが

龍馬、この人である。


「・・・小娘さんを起こそうとしているだけだが?」

「来るのが遅いと思っちょったんじゃ・・・
抜け駆けは許さんぜよっ!!」

「抜け駆けも何も・・・
彼女を起こすのに誰とも決まっていないだろう?!」

「いんや!おまんは助平じゃからなっ!
寝顔でも見に来たんじゃろう?!」

「助平とはなんだっ!お前と一緒にするんじゃないっ!!だいたい・・・・」


廊下でぎゃいぎゃいと口喧嘩が始まる。



「んん・・・」


・・・なんか

すごーく うるさい


小娘は寝返りをうち、重たい瞼を無理やり開けた。


・・・もう朝・・・?


むくりと上半身をおこし、ふぁああっとあくびをする。

ごしごしと目をこすってぼーっと壁を見つめた。



ぎゃーぎゃーと襖の向こうで

龍馬と武市の声が聞こえる。



・・・龍馬さんたち

何を騒いで・・・



ぼやけた頭のままに襖を開けた。


「おはようございます・・・何を・・・騒いでいるんですか??」


目をごしごしとこすり、ぼんやりと焦点が定まっていない彼女。


「朝餉の用意が・・・」

「「・・・!!!」」



小娘の姿を見た途端。

一時停止ボタンを押したかのように、二人は固まって動かなくなった。

しばらく小娘の姿を凝視し、みるみる顔を赤らめる・・・


我に返った武市は視線を外し、龍馬はわたわたと襖を閉めた。


「なっっ////なんちゃー恰好じてるがじゃっ!!肌を出しすぎじゃあ!!」

「・・・身なりを整えたほうがいいい。」



・・・・??


意味が分からず、襖に手を掛け開けようとするが・・・

「なんでえ?りょーまさん?」

龍馬の手により、襖は10センチ程しか開かなかった。

「わわわ・・・////だめじゃっ!!
着物を着るんじゃっ!!」


あ・・・そっか

暑かったから洋服で寝たんだった。

彼らには刺激が強かったのかな。

「あー すいません。でも、未来じゃフツーですよ?すいません。遅くなって。すぐ着替えますね」


小娘は

ふぁああっとあくびをして・・・

何事も無かったように

襖をきちんと閉めた。



→続く
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