琉千彩

□第四話
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―――寺田屋



・・・え・・・・なにこれ。



小娘は自室で歴史書に目を通していた。




年表には今まで見た事のない歴史。




18××年7月10日 寺田屋―新撰組―襲撃


坂本龍馬 捕縛・斬首

武市半平太 捕縛・斬首

中岡慎太郎 重傷を負い3日後に死亡

岡田以蔵 即死




   な に こ れ




ちょっと待ってよ・・・

昨日まではこんなの、書いて無かったのに。

何度見返しても、そこにはやはり見たくもない言葉が記されていた。

持つ手が震え、膝がガクガクと揺れる。

すぐさま歴史書を懐にしまい、小走りに部屋を後にした。


「以蔵!! いる?!」

言い終わるよりも先にスパーンと勢いよく襖を開ける。

「わっ!なんだ!いきなりっ!」

そこには、ふんどし姿の以蔵。

どうやら着替え中だったらしい。

だけど、そんなのに構っている場合ではない。


「今日って何月何日?!」

「はあ?!・・・7月10日だが・・・・」

キレながらも真面に返答するところが以蔵らしい。


7月10日・・・ってことは・・・


――――今日?!


小娘の顔はみるみると青ざめ、そしてくるりと以蔵に背を向けてバタバタと走り去って行った。


「おいっ!ちょっ!!何を考えているんだ!!・・・襖くらい閉めていけっ!!」


まったく。あいつは一体何なんだ?!


仕方なく襖を閉めようと手を掛ける。


――― 殺気?!


すぐさま襖の影に身を潜めた。


(こ、この悍ましいほどの殺気は何だ?!)

以蔵の顔が引き締まる。

すぐさま刀を拾い上げて身構えた。

ふんどし姿で。



殺気の持ち主により、襖がするりと開けられる。

そしてその姿を確認し、以蔵の手からカタンと刀が落ちた。


「・・・先生?!」


廊下をたまたま通りかかった武市。

以蔵の姿を見るなり、眉間にシワを寄せた。


「今、小娘さんが真っ青な顔で走り去っていったが・・・・」

そこにはふんどし姿の以蔵・・・・

「おまえは・・・小娘さんに何を?」

恐ろしい程の殺気を放ち、以蔵を睨めつける。

「ちっ!!違うんです!!先生っ!!」



いらぬ疑いをかけられて、以蔵の寿命はきっと・・・いや確実に数時間短くなっただろう。



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