琉千彩〜番外編〜

□龍馬×小娘
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・・・また、いやな夢。




小娘はゆっくりと目を開けた。


――― 最悪な目覚めだ。


重たい体で、かったるそうに寝返りを打つ。


小娘は悪夢にうなされる日が続いていた。


周りは暗く、ほんの少し窓から月明りが差し込んでいる。


まだ、夜明けまでには大分あるだろう。




「・・・っ痛」



痛む体を無理やり起こして、小娘は部屋を抜け出した。



縁側に座り、空を見上げると、そこには大きな月。


小娘を青白く照らした。


柔らかい風が通り抜け、小娘の肌を撫でる。


それがとても気持ちがよくて、小娘は目を閉じた。





「小娘さんかぇ?・・・こがな夜中にどうしたが?」



振り返ると、そこには龍馬が立っていた。



「龍馬さん・・・ちょっと寝付けなくて。」


小娘は苦笑し、再び視線を空へと向けた。


「・・・ほうか。」


龍馬は短く言って、目を細めた。



月明りに照らされる小娘の姿は、今にも消えてしまいそうな程、儚く婉美なものだった。



その姿に、思わず龍馬は見入ってしまった。




「・・・龍馬さんこそ、どうしたんです?」




見上げるように問われ、龍馬は顔を赤らめた。




「厠じゃ。」


にししっと笑って小娘の隣に腰を下ろす。


意識して、隣をうまく見ることが出来ない。




「ここの月って、とても綺麗ですね。」




不思議そうに龍馬は眉を寄せた。



「ほうか?月らぁて、何処も同じやないがか?」



小娘は浅く笑い、首を横に振った。



「未来では、空気が汚れていて、月も星も、こんなに綺麗には見えませんよ。」



龍馬は驚いて目を丸くしている。


「未来じゃー空気が汚れちゅうのかっ?」


おもわず大きな声が出てしまい、慌てて周りを見回す龍馬。


「龍馬さんっ、あんまり大きな声出したら、みんな起きてしまいますよっ」


小声で窘めると、龍馬はすまんすまん、と笑ってみせた。




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