薄桜鬼な世界
□〜プレゼント〜
2ページ/4ページ
「まさか、水泳部が野球部と結託してたとはなぁ。」
安心させるように軽い口調で言いながら、原田は彼女の頭を撫でてやった。
「酷いです。水泳部の方たちは部室なんていらないじゃないですか。」
「んーまぁ、あいつらもいろんなしがらみがあるんだろう?」
原田と千鶴が身を隠す理由。
それは――
年に一度の部室争奪戦
文字通り部室を巡って争う。
部室にあてがえる教室には限りがある。
そうなると問題になるのが・・・
活動の拠点を校庭や体育館に持つ彼ら運動部。
必然的に文化部が部室を独占し、運動部に与えられる部室は少ない。
一年間の部室使用権を部活対抗戦で勝ち取るのがここ薄桜学園。
で、その部活対抗戦。
ルールは簡単。
敵の鉢巻を多く取ったほうが勝ち。
剣道部は赤色と決まった。
「陸上部になんで美術部がいるんですか?文化部関係ないじゃないですかっ」
「美術部の部長と、陸上部の副部長が付き合ってるからだろうな。それに、お前も忘れた訳じゃないだろう?うちのルール(校則)」
「学校行事は・・・全員参加・・・ですか?」
恨めしそうに見上げる彼女の顔さえも愛おしくて、もう少し明るい場所で見たいと思った。
「そういうこと。俺たち教師も現に参加してるだろう?文化部も例外じゃないってことだ。」
言いながら、原田は自分の額をトンっと指差した。
原田の額にも千鶴と同じように赤い鉢巻が締められている。
「ま、不参加が認められてるのは、放送部と新聞部くらいだろうな。お、言ってる傍から戦況報告だ。」
ピーッという機械音と共に、放送が入る。
――― 新聞部より速報が入りました。
現在、バスケ部がバレー部の鉢巻を総取りしています。
次いで、陸上部。
ええと・・・剣道部がすごい勢いで鉢巻を取り返しているそうです! ――
「・・平助君。逃げられたんでしょうか。」
「あいつなら何とかするだろ。土方さんもいるしな。」
周りに生徒の気配はない。
遠く外、校庭の方で生徒たちの騒がしい声が聞こえる。
「とりあえず、出るか。」
「そ、そうですね。ここにずっといる訳にもいきませんし。」
名残惜しむように千鶴の頭をなでて
原田は引き戸に手を掛けた。
「・・・ん?」
カコン、カコン。と軽い音を立てるだけで
引き戸は数センチと開かない。
「おいおい。勘弁してくれよ・・・」
「どうしたんですか?」
不思議そうに首を傾げる。
状況が未だに把握できない千鶴。
流石に額に流れるモノを感じた。
「戸が・・・開かねえ・・・・」
☆