薄桜鬼な世界

□〜プレゼント〜
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「まさか、水泳部が野球部と結託してたとはなぁ。」



安心させるように軽い口調で言いながら、原田は彼女の頭を撫でてやった。

「酷いです。水泳部の方たちは部室なんていらないじゃないですか。」

「んーまぁ、あいつらもいろんなしがらみがあるんだろう?」




原田と千鶴が身を隠す理由。



それは―― 

年に一度の部室争奪戦



文字通り部室を巡って争う。


部室にあてがえる教室には限りがある。



そうなると問題になるのが・・・


活動の拠点を校庭や体育館に持つ彼ら運動部。

必然的に文化部が部室を独占し、運動部に与えられる部室は少ない。


一年間の部室使用権を部活対抗戦で勝ち取るのがここ薄桜学園。


で、その部活対抗戦。

ルールは簡単。

敵の鉢巻を多く取ったほうが勝ち。

剣道部は赤色と決まった。


「陸上部になんで美術部がいるんですか?文化部関係ないじゃないですかっ」

「美術部の部長と、陸上部の副部長が付き合ってるからだろうな。それに、お前も忘れた訳じゃないだろう?うちのルール(校則)」

「学校行事は・・・全員参加・・・ですか?」

恨めしそうに見上げる彼女の顔さえも愛おしくて、もう少し明るい場所で見たいと思った。

「そういうこと。俺たち教師も現に参加してるだろう?文化部も例外じゃないってことだ。」

言いながら、原田は自分の額をトンっと指差した。

原田の額にも千鶴と同じように赤い鉢巻が締められている。

「ま、不参加が認められてるのは、放送部と新聞部くらいだろうな。お、言ってる傍から戦況報告だ。」

ピーッという機械音と共に、放送が入る。



――― 新聞部より速報が入りました。

現在、バスケ部がバレー部の鉢巻を総取りしています。

次いで、陸上部。

ええと・・・剣道部がすごい勢いで鉢巻を取り返しているそうです! ――



「・・平助君。逃げられたんでしょうか。」

「あいつなら何とかするだろ。土方さんもいるしな。」



周りに生徒の気配はない。

遠く外、校庭の方で生徒たちの騒がしい声が聞こえる。


「とりあえず、出るか。」

「そ、そうですね。ここにずっといる訳にもいきませんし。」


名残惜しむように千鶴の頭をなでて

原田は引き戸に手を掛けた。

「・・・ん?」


カコン、カコン。と軽い音を立てるだけで

引き戸は数センチと開かない。


「おいおい。勘弁してくれよ・・・」

「どうしたんですか?」

不思議そうに首を傾げる。

状況が未だに把握できない千鶴。


流石に額に流れるモノを感じた。







「戸が・・・開かねえ・・・・」












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