琉千彩

□第八話
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日の沈み始めた廊下を、桂は小娘の部屋に向かって歩いていた。


高杉の質問攻めにあっていた彼女を

『今日は疲れているだろうから、早めに休ませてあげたらどうだ』

と提案し、部屋に案内したのはつい先ほどの事。


自分で彼女を解放しておきながら、どうしても彼女の事が気になって仕方が無かった。


怪我の具合を問う桂と高杉に、


『全く痛まない訳じゃないですけど、もうすっかり元気ですよ!』


そういってニッコリと笑う小娘の姿を思い出す。


あどけなさの残る、可愛らしい笑顔。

とても元気そうに見えた彼女の姿に、一時は安心したけれど・・・


気が付くと彼女の部屋へと足を向かわせている自分がいた。


渡り廊下を歩き、南側の屋敷へと向かおうとした時のこと―――。




渡り廊下から、桂は何の気なしに彼女の部屋の方を見た。


中庭を隔て、開け放たれた彼女の部屋が見える。



その光景に桂は目を奪われ、思わず立ち止まった。



茜色に染まる景色の中に、中庭を見つめる彼女の姿。



ちらりと見える横顔は、その景色の中に溶け込むように、同じく茜色をしていた。

さらりと彼女の髪を撫でつける風。

その髪を払いのける彼女は、思わず息を飲むほどに艶めいていた。






歳のわりに幼さが残る小娘を、桂はずっと妹の様に扱ってきた。


予想外にも大人びた女の顔をする小娘に、パチンと何かが弾けるような衝撃を受けた。




しばらくその光景に見入っていると、不思議なことがおき始めた。

ゆっくりと彼女の姿か薄くなり、ゆらゆらと陽炎のごとく動き始めたのだ。




「・・・え?」




驚きに目を瞬かせ、思わず声が漏れる。




どういう事だ・・・

・・・わたしは、寝ぼけているのか?



首を振り、再び視線を戻す。



今度は、徐々に彼女の輪郭がぼやけ、ゆっくりと景色に溶け込み始めた。



「!!!!」






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