合法ドラッグ

□drug2
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「おはようございます」

 私、【神無森飛鳥】がこの<みどり薬局>で働くようになって一ヶ月が過ぎた。

 ここに居る人たちは皆、私の同類と云える人たちばかりだった。

 この店に働かないかと声を掛けてきた【花蛍(かけい)】はこの<みどり薬局>の店長だった。

 彼の年齢は不詳。

 見た目には30代ぐらいのようだが、その表情からは何を考えているのか読みにくく、油断ならない笑顔を見せているので、得体が知れないという感じだ。

 だが、ここに住み込みで働かせてもらっているのだから、私にとってはとても恩人なのである。

 そして、花蛍の傍にはいつも【斎峨(さいが)】が居る。

 彼は、私が来てから一ヶ月間、いつも同じ黒い服を着てサングラスを掛けていて、花蛍と同じくらいの年齢に見えるのだが、とてもオヤジくさく、これまた全く読めない謎な人物である。

 私は<みどり薬局>の上の階にある部屋に住み込ませてもらっている。

 その部屋から店の方へと開店の準備の為に降りて来たところ、この二人と顔を合わせて挨拶を交わした。

「わっ!?」

 そこへ、大きな手が私の頭を突然に触れてきた。

「びっくりした……」

 私は触れてきた手の主の方に振り向いた。

 そこにいたのは【火群陸王(ひむらりくおう)】だった。

 彼は私と同じここのバイトで、同い年の17歳。

 無口で強面なタイプではあるが、私がここで働き始めてからとても優しくしてくれている。

「おはよう、飛鳥」

 もう一人のバイトが【栩堂風疾(くどうかざはや)】。

 彼も同い年で、花蛍のように男性だというのに、女性以上に綺麗な顔立ちをしている。

 私がここに雇われる少し前に彼は雇われたようだ。

 喜怒哀楽がすぐに顔に出る純粋なタイプで、少し頼りないところもあったりする。

 自分には<トラウマ>があり、しばらく、花蛍以外は警戒してしまっていた。

 だが、二人とも、私がここに来た初日からずっと優しくしてくれていたその温かさに、心の縛りが次第に解れていっていた。

 <トラウマ>……、私には…、

 私たちには…、

 普通の人とは異なる力があるのだ。

 風疾には、まるで焼き付いたように残る<人の記憶><モノの記憶>などが、他の人たちには見えないものが視える。

 そこであった様々な出来事が、特に感情絡みのものがよく視えるらしい。

 陸王は手を振れずにモノを壊すという能力を持っている。

 コップを割ることや枝を折ること、鍵を壊すことなど小さなモノを壊すことが主流らしい。

 そういう人たちは私と同類なのだ。

 彼らは出会ってしばらくして、私が少し慣れてきたであろう様子を受けて、それぞれの能力のことを教えてくれた。


『周りの人と違うなんて気持ち悪いっ!!』



(っ!!)

 耳を塞ぎたくなる。

 思い出したくない、過去……。

「飛鳥?どうした?」
「っ!!?」

 思い出したくないコトを思い出してしまい、耳を塞いで必死に目を閉じてしまった私に、風疾が顔を覗かせながら心配してくれている。

「大丈夫…だよ。ちょっと…、気分が悪くなっただけ…」

 そんな私の様子に気づいた花蛍が私の元へとやって来た。

「飛鳥ちゃん、大丈夫?……嫌なこと、思い出した?」
「・・・・・」

 私は花蛍のその言葉に目を見開いて彼のことを見た。

「過去は苦しい事だらけだったんだよね?君には…、」

 眉間に力が入る。

 花蛍は、まだ話してもいない自分の過去をすでに知っている。

 それは分かっている。

 分かっているが、こうして突っ込まれると気持ちが乱れてしまう。

 <トラウマ>だから……。

 動揺している私を見ながら、花蛍は変わらない綺麗な笑顔を浮かべている。
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