合法ドラッグ

□drug4
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「あと、飛鳥ちゃんのことは許してあげてね、二人とも」

 そう言いながら花蛍は二人の様子を窺っていた。

 風疾は気まずい表情を変えずにいて、陸王はずっと無表情を貫いている。

「今はまだね、他人のことが怖いんだよ。まだその傷が癒えていない。ここに来たばかりのことを思い出したら納得しない?」

 二人は黙ったままだった。

 私は、花蛍の胸から顔を上げられないままでいる。

「ごめんなさい…」

 だけど、振り絞った声で二人に伝えた。

「二人に初めて会った時に、もう脳裏に映っていた。大事な人なんだなと思ってたけど、怖かったから……、他人と関わることが……だから、ごめんなさい」

 二人の方に振り返ることはできないでいるが、これが私の精一杯の二人への誠意だ。

 伝わってくれたらと思う。

 すると、風疾が近づいてくるのが気配で分かった。

 私は身体を固めてしまった。

 それに気づいた風疾は私の背に触れようとした手を止めて、柔らかい声で言った。

「俺も…、大声出してごめん。飛鳥の気持ちを分かってやれなくて…、ごめん」

 それだけ言うと「おやすみ」と言って二人共去って行った。

 また、込み上げてくる想い――。

「飛鳥ちゃんもだけど、あの二人にもやっぱりつらかったかな?」

 花蛍が急に話を変えて、私に話し掛けてきた。

「心は…、正直だからね……」

 私は呟いた。

 そして、花蛍の胸から顔を上げた。

「私も、あんなことがあってもやっぱりアレに会いたいんだな…って思い知らされた」
「やり直したいんだろうね、飛鳥ちゃんは」
「そうなの…かな…?」

 やり直したいのかどうなのか、自分の気持ちだというのに分からないでいる。

 花蛍には私の先見はどう視えているのだろうか。

 私は、花蛍に寄り掛かったまま、夜空を見上げた。

 星が綺麗に瞬いている。

 遥か昔の瞬きは小さい光だが、それでも自分という存在はそれ以上に瞬きでしかないことを考えさせられる。

 この悩みも苦しみも、ほんのちっぽけなことでしかないというのに、それでも私たちは悩み苦しむ。

 それは精一杯生きているという証なのだろうか。

 分からない。

 分からないが、私は、ここでしっかりと自分を見つけて行こうと思う。

 ここが、花蛍が用意してくれた私の<場所>だからだ。
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