CCFFVII
□貴方は空
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月日は流れ、春が来て夏が来て秋が来て冬が来て、そんないつもの日常のなかでいつもと違うのはザックスがいない。ただそれだけ。それだけのことが私にとっては辛かった。
季節が4回巡った、私はザックスに89通目の手紙を書いた。ツォンが長期任務に行ってしまって出す宛がなくなってしまった。そのことを書いて封を閉じた。
「あれ、降りてきたの?」
ふと振り返ればアンジールコピー。羽を広げ背を反らせるその姿は誇り高き戦士のように見えた
「ねぇ、あなた。飛べるの?」
ばさっと羽を広げる。これは同意の返事。
「じゃあ、これ。お願い、届けて?」
すっとそれを受け取ってもらう。この子は強く優しい。きっと届けてくれる。
飛び立っていくアンジールコピーを見守った
「ありがとう…」
また1年が過ぎた。
いつものように花の手入れをしていると、雨が降り込んできた。それを悲しいと感じた。涙のような、そんな冷たい雨。
(最後の手紙は貴方に届きますように)
なんで今…ザックスのこと…?
空から降ってきた貴方は独りだった私に空を、世界を教えてくれた。独りだった私を救ってくれた
貴方がいなきゃ、ずっと狭い世界の中独りだったんだよ
『ミッドガル花でいっぱい 財布お金でいっぱい』
貴方に会いたいと思う気持ちは薄れることなく私のなかに残り続けた。
スラムを見上げる。プレートしか見えないこの場所を離れる。
この上へ。真っ青な空を見に行くの。
(あの子はこの空が怖いって言ったんだ…)
私はこの空を怖いと思った
(じゃあエアリスが上に行くときは俺が連れていってやるよ)
ありがとう。いつかまた
(じっくり見て)
貴方のその空色の瞳を綺麗だと思ったんだよ。
だってそれなら怖くない
だから
「綺麗…」
貴方に会いに行く
『な?綺麗だろ?怖くなんかない』
隣で声が聞こえたけれど誰もいない。あったのは白い羽だけ
「また、会えた」
涙が頬を伝った。
(貴方は空)
真っ青で綺麗な、空だよ