とある魔術の禁書目録
□君が素直になる日
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「オマエなンて大っ嫌いだ」
朝、突然家に来た恋人の開口一番がソレ。え、流石の上条さんも涙目ですけど。玄関でショックの余り立ち竦む俺の横をすっと通り抜けていった一方通行はリビングのベッドにどかっと座り込んだ。
「何してやがる。さみィだろォが。早く閉めろ」
春とは言えまだ肌寒いこの時期。ふと我に返り玄関を閉める。
嫌われることなんかしたっけ?最近しつこすぎたからか?やっぱ昨日のが…
一つ考え出すと何か色々思い当たる節が出てきちゃって余計涙目。ああ俺ってホントバカ。この前放って行っちゃったのも怒ってたしそれかもしれないな…って。
ちらっと一方通行を盗み見れば顔を俯かせていて表情が窺えない。耳まで真っ赤にして…そんなに怒ってんのかな……
びくびくしながら隣に座ると、一方通行の体がビクリと跳ねたのが分かった。少し不審に思ったけどきっと今から殴られるんだって解釈した。
俺だって男だ。正当な理由があるなら殴られたって構わない。……能力は使わないで欲しいけど
「あの、あ…一方通行さん?何を怒っていらっしゃるのでせうか?」
「…あァ?」
「俺に、飽きた…とか?俺じゃ満足できないとかってこと?」
「何の話をしてンだ」
眉間にシワを寄せ、可愛い顔を台無しにしながら(でもそんな顔も可愛い)一方通行は逆に尋ねてきた
「きらいって、さっき」
指をくるくる回しながら聞けば一方通行は一瞬目を丸くした後、呆れた表情で盛大に溜め息をついた。
「オマエ、バカにも程があるぞ。バ上条、海産物。海に沈め」
「いや上条さんは仰る通りおバカさんですが海産物じゃ…いてっ!!」
投げられたのは卓上カレンダー。丸をつけているのは一方通行が遊びに来る日。今日はその丸が入っていない。日付は4月1日。下の方にインデックスの字で小さく何かが書いてあった。
『Aprilfool』
インデックスは行事ごとが大好きで事ある事にご馳走にありつこうとする。それが祝い事かどうかは関係ない。極端な話、記念日なら体育の日でも文化の日でも何でも良いのだ。うちには経済的にそう言った余裕が無いため、行事の日には俺の担任である小萌先生の所で1日過ごしてくるのが常である。それを今思い出した。だから今日は家に居ないんだった
「エイプリルフール?」
エイプリルフール。確か午前中は嘘をついても良い、って日だったはずだ。そう言えば朝、土御門と青ピから『彼女が出来たぜい』『僕、彼女出来てんでー』っていうメール来てたな。
一方通行がそういう行事に乗るなんて思ってもみなかったからすっかり忘れてた。それより一方通行は何て言ったんだっけ?『オマエなんて大っ嫌いだ』?
それってつまりは…
「俺の事が大っ好きだって事でいいんだよな?」
「……っ、」
自分で言ったくせに真っ赤になって目すら合わせてはくれない。怒っているんじゃなくて恥ずかしがっていただけだったのかと思うと急に愛しさが込み上げる
時計を見ればもう12時を少し過ぎていた
「一方通行、好きだー」
ぎゅーっと抱き締めると最初はじたばたもがいてたけどこれは照れ隠し。少しすると大人しくなった。
「なぁ」
「何だ、バ上条」
「昼過ぎたから、ちゃんと言って?」
「何を」
エイプリルフールは終わった。嘘をついて良い時間はもう終わったんだ
「俺の事、嫌い?」
「…黙れ」
「ちゃんと言ってくれなきゃ上条さん泣いちゃいますよ?」
「………」
少し黙った後すっと手がのびてきてそれに耳を掴まれる。そして
「 」
「……っ!!」
耳元で囁かれたその言葉で顔が熱を持った。一方通行は本当に悪魔だ。こんなにも俺の心を鷲掴みにして離さないのだから。
『 好 き だ 』
その三文字で俺の心は幸せに満たされた。
(( 君が素直になる日 ))
(エイプリルフール最高だな!!)
(…あァ、そォかよ。そりゃ良かったですねェ)