ストーカーは恋をする

□ストーカーの決意
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「あの…専攻変更したいんですけど…。」

そう、敦子が決意した事は専攻変更。
この大学の特色でもある専攻変更は
一年生の間であれば専攻変更ができる。
だが、それには試験があり
それぞれの学科長に申し込みをして
試験を受けなければならない。
それは入学試験よりも難しく、
今までに習っていない単位を
取得する意味も込めて難解を要するものだった。
なので制度として存在するものの
受ける生徒は毎年0に等しかった。

「では、こちらの用紙に記入して下さい。」

受付の人に渡された用紙へ記入を済ませ渡す。
すると少しして受付の人が資料を敦子へと渡した。

「これを学科長の篠田先生へ渡して下さい。
試験内容は先生が教えてくれますので。」

「はい。ありがとうございます。」

「教室はそちらの地図で確認して下さい。」

そうして地図を確認しに行く敦子。

「受付の人、驚いてたな…。やっぱり珍しいんだ…。」

独り言を呟きながら敦子は
芸術科の校舎へと足を運んだ。





―――――……

「失礼しまーす…。」

学科長の部屋に控えめに入ると
背を向けていた立派な椅子がこちらへと向いた。

「はーい。君が前田敦子、さんかな?」

「あ…はい。え…っと試験に、」

「あー、話は聞いてるよ?専攻変更したいんだよね?
多分知ってると思うけど、あたしが芸術科長の篠田です。
以後よろしくね?」

「…はい。」

「んー…じゃあ…。」

立ち上がって教材を積み上げていく篠田。
それを呆然と見つめていた敦子に篠田は笑顔で言った。

「この各教材の最初から20ページのところまでが
試験範囲だから。教材は貸してあげるから
一週間後にまた来て?」

「は、はい…。」

渡された教材は全部で7冊。
計140ページの試験範囲に息を飲む敦子。
教材を胸に抱えて部屋を出ようとしたら
篠田に声を掛けられて歩みを止めた。

「あのさ、一つ聞いてもいい?」

「………?」

「なんで普通科から芸術科に変更したいの?」

専攻変更する者は確かに少ないものの
過去に数人は変更した者がいる。
だがそれらの大体は
経営学科から国際科、または普通科から経営学・国際科へと。
三つの学科から芸術科へ変更する者は
限りなく数が少なかった。
それが故にここ近年にはいないほどだった。

「それは…。」

「うん?…あぁ、この質問は試験には関係ないから気にしないで?
篠田が興味あるだけだから。」

敦子は顔を伏せながらも頬を赤らめて言った。

「ここなら…私の知りたいことが…知れるから、です。」

「…ふーん。そっか、そっか。
ごめんね?引き止めて。もう行っていいよ。」

「…いえ。じゃあ失礼しました。」

静かに扉を閉める敦子。
篠田は椅子に腰かけた。

「なーんか危ない感じだなぁ…。」

敦子の名簿を見ながら呟く篠田は
敦子の瞳の奥に灯る影に不信感を抱いていた。




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