ストーカーは恋をする

□ストーカーの始まり
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「失礼します…。」

一週間後、敦子は試験に挑むため
学科長である篠田の部屋に来ていた。

「はーい。いっらっしゃい。」

笑顔で迎える篠田は敦子に部屋の中央にある
テーブルを囲んだソファへ座るよう促した。

「それで、試験なんだけど制限時間は4時間。
だから…今から6時までしてもらいます。」

「はい。」

「いい返事っ。篠田は5時半くらいに戻るから。試験頑張って?」

部屋を出ようとする篠田を敦子は慌てて止めた。

「あ、あの!…監視、しなくていいんですか?」

敦子の問い掛けに篠田は頭に?を浮かべた。

「なんで?」

「あ、その…カンニングとか…。」

「あぁ…。必要?」

有無を言わせない笑顔に敦子は言葉を失った。

「篠田は前田さんを信じてるから。じゃっ、試験頑張って。」

篠田は静かに扉を閉めて出て行った。
敦子は唖然していたが直ぐに
テーブルに置かれた試験用紙に向かった。











――――――………


時計の針が夕方の5時を少し回ったところで
敦子はペンを置き背伸びをした。

「ふー…。やっと終わった…。」

見直しがてらに用紙を眺めていると部屋の扉が開いた。

「およ?もう終わったの?」

入って来たのは篠田だった。
背中を曲げていた敦子は背筋を伸ばして
篠田に試験用紙を渡した。

「おー…すごいね。空欄一個もないじゃん。」

まるで子供を褒めるように篠田は敦子の頭を撫でた。

「………結果、は何時もらえますか?」

撫でられたことに少し怯んだものの敦子は
試験結果が気になって仕方がないようだった。
そんな敦子に篠田は変わらず笑顔を向けた。

「今日と同じ時間に明日、来てくれる?」

「はいっ!」

敦子は元気よく返事をすると頭を下げて部屋を後にした。





「頭いーね。敦子ちゃんは。結構難しかったはずなんだけどな。
…そうまでして知りたいことは何なのかね。」

試験用紙に丸を付ける篠田。
敦子を頭の片隅に置いて配点を進めた。




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