ハナウタ
□1.この感情の名を
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4月9日AM8:00
「金造!!」
「んー・・」
「早く起きぃや」
「んー・・」
「いい加減にせな・・・朝飯抜くで」
俺はその言葉に飛び起きた。
「なっ・・・卑怯やで柔兄ぃ!!」
「お前・・・今日から学校ちゃうんか」
俺ははっとしてカレンダーをみる。
4月9日にしっかりと赤丸で囲まれ、
俺の字であろう大きな字で始業式と書かれていた。
「やばっ」
俺は今日から2回生にあがる。
2回生は何故か入学式の準備とやらで8:15登校。
あと15分。
朝飯を抜いたとしても自転車をすっとばしたとしても
ギリギリ間に合うか否か。
だがしかし間に合わなければ反省文という地獄が待っているため俺には朝飯を食べる余裕などない。
「くっそ・・・」
俺は急いで着替え、8:05に家を出た。
全速力でペダルをこぎ、8:13に校門をくぐった。
間に合って一息ついていると目の前には見たことのない顔の女の子が立っていた。
(見慣れない子やな・・)
すると彼女はこっちに気付いた。
目が合って不覚にもときめいてしまう自分がいた。
彼女はパタパタという効果音が付きそうな走り方で俺の方に向ってくる。
『すいません・・・事務室はどこに・・・』
「あぁ・・事務室やったらそこの角を右に曲がったとこのつきあたりやで」
『ありがとうございます』
そう言って彼女は頭を下げ、満面の笑みで俺を見た。
俺は柄にもなく、顔が火照るのを感じる。
『これ、お礼です』
小さな手で俺の手の中に飴を握らせた。
『それじゃ失礼します』
そしてまたあの小走りで去って行った。
この感情の名を
恋だと気付くのに時間はかからなかった。
(新入生やろか・・////)