ハナウタ

□3.その涙の意味に
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彼女は名前を桜木雅といった。

「じゃぁみーって呼ぶな」

俺が笑顔で言うとそれと対照的に彼女は一瞬切なそうな顔をした。

『うん』

俺は不思議に思ったが、再び彼女笑顔になった彼女に気のせいだろうと思い返した。

一目ぼれなんて信じてなかったが、信じるも信じないも今自分がそうなんだからどうしようもない。

俺に対する彼女の反応の全てをいとおしく感じた。

俺はあることを思いつきふと立ち止まる。

ぶつかるみー。

『どうしたんですか??』

「行きたい場所があるんや」

そう言って彼女の手を引き走り出した。



『・・・音楽室??』

「おう・・・ぼっろいやろ」

そしてドアを開け、彼女を促す。

『これ・・・ギター??』

俺のギターを指さし、彼女が問う。

「あぁ・・・」

俺はギターの弦を軽く弾く。

「弾いてもええ??」

すると彼女は少し間を開けて無言でうなずいた。

俺はギターを弾き始めた。

その音に合わせるように歌う。

聞いてくれてる彼女を思いながら・・・

曲が終わり彼女を見て俺は戸惑った。

「みー・・・??」

彼女は俯いて泣いていた。

そして彼女が俺を向いた時、

悟ってしまった。



その涙の意味に



俺の姿はないと。

伝える前からフられてしまったのだ。


ただただ涙を溢す彼女の背中をそっと撫でてやる事しかできなかった。

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