其の弐
□俺と十四郎と昔の約束
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「お邪魔しまぁす」
あっ十四郎だ!
急いで出ないと。
なんで?
なんで早く出たいの?
会いたいから……。
……なんで早く…会いたい?
そう考えて動きが止まる。湯船から上半身だけを出た姿勢で固まる。動けなかった。
「……俺…変だ」
「銀時!何してんだよ飯………っておい自慢の息子縮んでんぞ」
「なっ!!!うっせぇなぁ!!今行くから出てけよ!!」
「濡れた手で触んな!!」
背中を押した瞬間、女の柔らかい臭いがした。
やっぱ部活じゃなかったんだな……。
「……嘘つき」
目が熱くなったと思ったら涙が溢れた。
馬鹿だな…俺。
次の日、体調が悪いと嘘をつき学校を休んだ。
朝学校に行く十四郎に手をふる。
向こうもふりかえす。
「ちゃんと休めよ!!」
「うっせーな…」
十四郎がチャリで学校に向かう、どんどんその音は小さくなっていった。
家の中も静かだ、親は朝早くから仕事に出かけた。
ブーブーブー
外からバイブ音が聞こえると思ったら無用心に十四郎の部屋の窓は全開で机の上に携帯が置いてあった。
「あの馬鹿忘れたな」
ブーブーブー
バイブ音はなかなか止まず電話だと気付いた、いつまでたっても切れず鬱陶しく思い、窓を飛び越えて十四郎の部屋に侵入した。
「はい、どちらさん?」
『えっ…あ、ミツバです』
「っ!!!!」
ミツバ……
十四郎の…彼女
「なに?」
『あの…十四郎さんは?』
「いねーよ?あいつ携帯忘れたみたいでよ」
『そうでしたか……』
「十四郎になんかよう?」
『いえとくには…あの……十四郎さんとはどういった…』
「十四郎の彼女なのに知らないの?」
ムカつく……
なにが"十四郎さん"だ。
ふざけんな!!
俺のだったのに……
俺の……?
「だった……」
『えっ?』
「…俺の十四郎だったのに……」
ぶちっ
俺はなにがしたかった?
俺は十四郎の携帯を握り締めたまま、十四郎のベッドで寝た。