任侠ヘルパー

□任侠ヘルパー
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‐夜‐


彦一さん達がいる宿舎にくると、三樹矢の声が聞こえた。



三樹矢「あーもうやめだやめ!


研修だか何だか知んねぇけどジジババの世話なんかやってらんねぇよ。


りこちゃん、こんなとこ速攻出て行こうぜ。」


りこ「一人で出てけよ。」


三樹矢「いや、一人じゃ親父に殴られるだけだし……」


りこ「その親父の金で、一生食いっぱぐれることないんだろ。


あんたとは違うんだようちらは。」


三樹矢「五郎さん、六車さん、まじでこんなこと続けるんすか?!」


五郎「俺は幹部の座、まじ狙ってっから。」


二本橋「頭が仰るように介護は大きなしのぎを得るチャンスかもしれませんからね。」


「帰りたいなら帰ってくれて構わないけど。」


『……!』


五郎「てめぇいつから!」


「三樹矢の奇声から。」


二本橋「足音も気配さえもしませんでしたよ……」


三樹矢「明日香、」


「皆さん、今日は研修初日お疲れ様でした。


明日は今日のようなことが起こらないようにしてください。」


『………』


「それと遅刻、無断欠勤は言語道断です。


それが嫌なら今すぐ出てってください。」


三樹矢「彦一さん!


六本木の翼彦一っつたら入れ墨見た奴が三日三晩桜の夢でうなされるってくらいの人でしょ?」


彦一「だから?」


三樹矢「あんたみたいな人がさ、こんな所でオムツ替えてていいのかよ?


あんた極道だろ?!」


『………』


彦一「ばーか、極道はなどんな状況にいたって極道なんだよ。」


「……ふっ、どんな状況にいたって極道ね。」


彦一「あ?」


「お年寄り餌にして金巻き上げる最低な奴がよく言うわ。」


五郎「てめぇ、」


「あんたがしてきたことは全てお義父様から聞いた。


お年寄り餌にして金儲け。


それがあんたの言う極道なら笑っちゃうわ。」


りこ「……何が言いたい。」


「まともな生き方してない奴らに、まともな仕事なんかできっこない。」


五郎「てめぇこの野郎!」


三樹矢「五郎さん、やめといたほうがいいよ!」


五郎「何でだよ?!」


三樹矢「こいつの親父、鷹山組になる前の高宮組組長だったから……」


彦一「……てめぇ、」


「父はもういないけど隼会若頭 上野地区貸元 高宮組・組長、高宮俊彦です。」


二本橋「お父上は?」


「当時ひどく敵対関係にあった組と抗争が起こって死んだわ。


母もその抗争に巻き込まれて死んだ。」


『………』


「……とにかく、ここはあなた達の住む世界とは違う。


無駄なことはしなずに大人しく研修辞めて帰りなさい。


あなた達、ヘルパーに向いてないわ。」


三樹矢「明日香、!」


「ヘルパーは遊びじゃない仕事なの、大切な仕事なの!


あなた達みたいな中途半端なはみ出し者がいると迷惑なのよ!」


『………』


「……もし、研修を辞めたいのであればどうぞ辞めてください。


お義父様には私から話します。


研修を辞めるお膳立てはいつでもしますから。


では失礼します。」



それだけ言って宿舎を出た。


あんな奴らに、まともに生きることなんかできない。



「……そうよ、できない。」



できっこ、ないわ。







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