任侠ヘルパー

□任侠ヘルパー
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‐翌日(夜)‐


彦一さん達にヘルパーの仕事や、利用者さん達のことを教えるために、私と和泉さんで勉強会をしている。


こいつら、何も聞いちゃいねぇ。



和泉「認知症の人の不眠や夜間の徘徊は、彼らの生活リズムを守るうえで絶対に避けろ。」


「なるべく昼間の活動量を増やしたりして、夜間には充分な睡眠が取れるよう心がけてください。」


和泉「お前らが寝てどうすんだよ!」



そう怒鳴って黒沢さんと三樹矢の頭を和泉さんは叩いた。



五郎「何しやがんだこらおい!」


「あーもううるさい!


人が教えてくれてるのを寝ないで聞くのは当たり前のこと!


ここで働く以上、一切の甘えは許さない。」


『………』


三樹矢「………」



























勉強会が終わり、和泉さんと私で片付けをしている。



「お疲れ様です。」


和泉「お疲れ。」


「何か、すいません、彼らのことでご迷惑かけて……」


和泉「何で高宮さんが謝るの?」


「あ、いや、何となく……」


和泉「……高宮さんは彼らがこの先仕事をちゃんとするって思える?」


「……え?」


和泉「………」


「……してもらわないと困ります。


でも、彼らが仕事をちゃんとするとは思えません。


……彼らはヘルパーには向いてないから。」


和泉「高宮さ……、鷹山……」


「え、」



和泉さんの言葉に後ろを向くと、厳しい表情をした三樹矢がいた。



「……三樹矢、」


三樹矢「………」


「ちょ、三樹矢、!」





























三樹矢に引っ張られてしばらく歩いて止まった。


三樹矢に腕を捕まれ、しまいには壁に叩きつけられてしまった。



「いった、何すんのよ、」


三樹矢「………」


「……三樹矢?」


三樹矢「………」



三樹矢の顔が近づいてくる。



「ちょ、三樹矢、みきっ……」


三樹矢「………」


「ちょ、いやっ、三樹矢っ!」


三樹矢「……!


あ、いや、ごめ、ごめん……!」


「……手、離して。」


三樹矢「………」


「三樹矢。」


三樹矢「……昔みたいにさ、」


「………」


三樹矢「昔みたいに、できねぇかな……?」


「………」



三樹矢……



三樹矢「昔みたいに……」


「無理よ。」


三樹矢「……、」


「私はヘルパー、あなたは極道。


私達は、住む世界が違うの。


昔みたいになんて、無理よ。」


三樹矢「………」



そう無理よ。


昔みたいになんて、今更。







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