任侠ヘルパー

□任侠ヘルパー
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‐夜(宿舎)‐


三樹矢「何であんなこと言ったんだよ?!」



宿舎に、三樹矢の声が響く。


みんなも、私をジっと見つめてくる。


私は、みんなの視線から少し目を逸らした。



「……だって、」


三樹矢「だってじゃねぇだろ!


明日香まで正体バラす必要なかったじゃねぇか!」


「………」


りこ「何であんなこと言ったんだよ?」


「………」


二本橋「何か、理由があったんでしょう?」


「……みんなの正体がバレて、和泉さんも自分の正体をバラした。


なのに私だけ何も言わないなんておかしいじゃないですか。」


三樹矢「それは、」


五郎「お前はヘルパーなんだから正体バラす必要なんかねぇだろ。」


「でも、私が極道の人間ってことに変わりはない。」


『………』


「だから、私もちゃんとみんなに言うべきだったんです。」


『………』


りこ「……あいつには?」


「え?」


二本橋「和泉さんには?」


「言いました。


和泉さん、めちゃくちゃ怒ってました。」


六車「そりゃそうでしょう。」


「………」


三樹矢「お前って奴は……」


「三樹矢、」


三樹矢「明日香、聞いて?」


「うん、」


三樹矢「正体がバレた以上、明日香も俺らと同じように見られるんだよ?」


「うん、」


三樹矢「怖がられるし、好奇の目で見られるかもしれない。」


「……、」


三樹矢「辛い思いするだけだよ?


それでもいいの?」


「……うん、」


『………』


三樹矢「あのね明日香、」


「怖がられても、好奇の目で見られても、辛い思いしても、ほんとの言わずに過ごすよりマシ。」


『………』


「……私、極道が嫌でこの仕事に逃げてきたんです。」


『………』


「家族を失った原因である極道が嫌で、あの世界から逃げ出したくて仕方なかった。


たまたま見た求人雑誌にこの施設が載ってて、そのまま逃げるようにヘルパーの仕事に就いたんです。


極道の世界から逃げられるなら、どこでもよかった。」


『………』


「でも、逃げられなかった。


逃げられるわけ、なかったんです。」


『………』


「………」


三樹矢「でも、明日香がタイヨウにいたから、明日香と再会できた。


明日香とこうやって、付き合うことができたんだ。


だから俺は、明日香がタイヨウにいてよかったって思ってる。」


「三樹矢……」


三樹矢「みんな、口には出さないけどそう思ってるよ?


ねぇ、みんな?」


『……、』


五郎「……うっせ、」


「皆さん……」


りこ「明日香。」


「りこさん、」


りこ「……何つーか、その、」


「……?」


りこ「馬鹿息子が言ったこと、間違ってねぇよ。」


「え、?」


りこ「………」


「りこさん……」



堪らなくなって、私はりこさんに抱きついた。



りこ「おい、」


「……っ、」



ブツブツ言いながらも、優しく受け止めてくれるりこさんが好き。



「りこさん大好きっ……!」


りこ「……(笑)」


『……(笑)』



私、頑張る。


三樹矢と、みんなと一緒に頑張るから。






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