夢見処


□好きになるとどうして【前編】
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僕は
きっと
誰かに本気で
「恋」なんかしないと思ってた。

あの日、あの時
君に出会うまで

〜好きになるとどうして〜

彼女の名前は名無しのごんた

彼女との出会いは半年前。

バーで知り合い意気投合したとエイプリルが
酔っ払った状態で名無しのごんたを下水道に連れて来たのが始まりだった。

エイプリルは1人で酒を飲んでいる彼女の事が、大分前から気になっていたらしい。
思い切って声をかけたら、たどたどしい発音で返されて、名無しのごんたは英語があまり話せないことを知ったみたいだ。
仕事でこっちに飛ばされたが、読み書きは出来ても、肝心の話すというスキルが彼女には足りなかった。
そんな状態じゃ、友人が出来るはずもなく
話さない事で、さらに彼女の英語スキルは伸びずにいた。
エイプリルも大概世話焼きだ。
彼女を僕らのところに連れてきたのは
何とかして力になりたかったからだろう。

人懐っこいミケランジェロ
正義感の強いレオナルド
誰よりも家族思いのラファエロ
そして、頭脳派の僕。

名無しのごんたが1人でも来られるように
最初のほうだけエイプリルは何度も僕らの元へ彼女を連れて来た。
僕の教育的指導もあって、名無しのごんたは話す事への劣等感が無くなり、今では冗談まで言えるようになった。

「ドナテロが先生で良かった。」

「ドナテロは本当に天才だね?落ちこぼれの私に、英語を話す楽しさを教えてくれたし、自分でも不思議なくらい頭の中に言葉があふれてくるの。」

「この間ドナテロが作ってくれた翻訳装置、すごく便利で助かってるの・・・。ありがとう!」

僕は、彼女の為だけに特殊な装置を作り、容易く英語を理解できるようにした。
感謝される事は初めてじゃない。
だけど、あんな風に笑って喜んでくれるのは彼女が初めてで、何をしても何を作っても
ドナテロだからと、出来て当たり前のことに対して、誰も褒めてはくれなかった。
褒められたかったわけじゃない。
でも、たまには認められたかった。
必要とされたかった。

当たり前が、当たり前じゃなくなった日。
ドナテロの中で彼女は特別な存在に変わった。

名無しのごんたは些細な事でも感謝をし、相手を敬った。
それはドナテロに限った事ではない
他のみんなにも同じだった。
けれど、ドナテロの中では違っていた。
自分に特別に優しい。
自分が言われたい言葉を言ってくれる。
自分を見てくれている。

ドナテロの中に、どんどんと真っ黒い闇が広がっていく。
真っ白な紙にインクを垂らすように
じわじわと侵食していく。

名無しのごんたに関わる事全てに
冷静さを失っていた。
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