夢見処


□意地悪な神様よ私を笑え!
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好きな人を親友に譲りました。

好きな人を幼馴染に譲りました。

私のあだ名はいつの間に「恋のキューピッド」でした。

そこのずぼらな神に告ぐ!!
最後に笑うのはこの名無しのごんた様だー!!

〜意地悪な神よ、私を笑え〜

「あーぁ!!男が欲しい!!彼氏が欲しいよ〜!!」

私はこれでも立派な社会人。
社会人何年目だろう…。
考えたくはないけど、割と良いポジションにもなっているし、もう少し本腰入れて仕事に生きるか、はたまたゆるーく適当に仕事しながら恋愛に生きるか。
まさに、年齢的にもどっちかを選択する時が来たようだ。
考えたくは無いけれど、女にはどうしても賞味期限と言うものが付いて回る。
結婚か仕事か…。
取り敢えず、彼氏は欲しい。だって、もう何年も恋愛してないんだから。

手にしていたボールペンをパソコンのモニターに投げつける。
バシンッと乾いた音がして、カタカタっとペンは転がっていった。
隣を見ると、同僚であり親友の夢友ちゃんが笑っていた。それが余計しゃくにさわったが、私はその感情を表には出さないで笑顔で返すのだ。

「いいよなぁ〜、熱々の恋人がいる人は…。羨ましい限りだね?」

嫌味で返した、皮肉った。
正直まだ三年前の恋を引きずってますよ…何か?
でも、全然気にするそぶりを見せないから…自己嫌悪…ごめん。
いつも可愛いあんたに嫉妬してるのは私…。
そんなあんたを独り占めしておきたいのも私。
だけど、そんなあんたの彼氏を好きだったのも私。
わかるかなぁ〜わかんないよね。私もよくわからない…。
今は誰かを好きになるのも怖い。

ペンを拾い上げて夢友ちゃんに振り返った。

「ねぇ、誰かいい人紹介してよ!」

「…良い人か…どんな人好きなの?」

まじめに返されたから少し拍子抜け…とりあえず、拾い上げたペン先をを見つめ。

「そうだなぁ〜…やっぱり私だけ見てくれる人がいい。」

「それだけじゃわからないよ。」

「二枚目は苦手…性格が良くて、私の話聞いてくれて、だけど子ども扱いしない人。対等に付き合える人。」

「あっ…居るかも…・・うん・・…話してみるね?」

「えっ?いや…えぇぇ?いきなり…一応待ってる。」

「うん。一緒に幸せになろうね?」

この笑顔…逆らえないよ。
何でこんなに可愛く笑うんだよ…。
私の気持ちしってるのかな…本当に…不安…。
不安を通り越して、現実は時に厳しい。
次の日、彼女は私をとんでも無い場所へと案内した。
ニューヨークの下水道。
おかしいでしょ、本当に何を考えてるの…。
下水道に紹介したい男がいるって、それってどんな奴よ?
え?何なの?水道局員?それとも裏稼業のやばい人?
嫌がる私を半ば強引に手を引き彼女はあるいていく。
そして、連れて行かれた先には見た事も無い様な光景が広がっていた。
そこはまるで秘密基地。夢でも見ているような気分で私は彼女に声をかけた。

「ねぇ、ここって…もしかして穴場のBAR?」

「やだ、違うよ!そんなんじゃないよ、ここはね…。」

言いながら、夢友ちゃんは私を残して部屋の奥へと消えていった。
そして暫くして戻ってくるが、その彼女の背後には見た事も無い姿の何かがついてきていて私は何度も瞬きをした。

「名無しのごんた!!紹介するね、こちらティーンエイジャーで亀のミュータント、しかも忍者でニューヨークの平和を守ってくれてるドナテロ君だよ。」

「ティーン…忍者、亀、ミュータント?え…何かのコスプレかな?芸人?役者?」

夢友ちゃんは私の言葉を無視して言葉をつづけた。

「それで、こっちが私の親友の名無しのごんただよ!!」

だよって…そんなに可愛く言ったって無理だよ…。
しかも、いきなりかよ!!誰だよこいつ!!どう見たって人間じゃないし、でかいし!!
コスプレなのか何なのか分かんないけど、何なの、本当にどうなってんの…。
混乱したまま私の顔は見る見る曇る。
相手のドナテロってやつもよくわかってない様子だし…正直帰りたい。

「…名無しのごんただっけ?…良く分からないんだけど、夢友がどうしても君を紹介したいっていうから付いてきたんだ。」

「…そう…ですか…。」

「すごく不満そうな顔、寧ろ不穏な感じだね?僕に会いたかったんじゃないの?」

「…え?いや…そんなんじゃ、って?何?会いたかった?別に私はそんな事思ってない。」

「随分な言い方するなぁ〜…。僕だってそんな風に言われたら気分は良くないよね。もう少し言葉を選んで話した方が良いんじゃない。」

「それは、貴方も一緒でしょ?」

私は睨む様な視線で相手をちらっとだけ見て、夢友ちゃんに視線を移した。

「夢友ちゃん…あんたは何時も何時も、唐突すぎんのよ!!これじゃ、私がドナテロ君とやらと話がしたくて呼び出したみたいでしょうが!!少しは考えなさいよ!!段階があるでしょ、段階が!!そもそも相手の情報も無しにいきなり会わせる様なやり方も乱暴過ぎて言葉にならないわよ。」

「ごめんね〜…だけど、善は急げだと思ったの…。」

私は涙ぐむ夢友ちゃんにため息漏らしつつ彼女の頭を撫でて落ち着かせる。
一方ドナテロ君とやらは、何が可笑しいのか一人笑っていた。

「ちょっと、何笑ってるのよ?」

「あぁ…2人のやり取りが僕の兄弟を見てるようで面白いなと思って、良いつっ込みだったよ、ほんと…タイミングばっちりだね。…ふふっ、ごめん、あんまり気にしないで続けて。あ、でも、君って本当にきつい言い方するよね?そういう言動取ってると損すると思うけど、少し改めた方が良いよ。」

「…面白いって言ったり、言い方がきついと言ったり、初対面のあんたに何がわかるのよ?へらへら笑っちゃって。全然面白くないんですけど!」

私は夢友ちゃんから手を離し、ドナテロを指差す。
何だこいつ…面白いって何だよ…。
それに、言動がきついから改めろですって?
全然この状況笑えないですし、突っ込み入れないと先に進めないんですけど。
それなのに、あいつってば1人でへらへらしてくれちゃってさ…。
私の怒りは頂点に達しそうだ。

「人の事、知った様な口振りで話さないでくれます。」

「だって、この数分話しただけでも何となく君の性格が見えてきたし、その歳でそのままいったら良い事無いだろうなと思ったから指摘したまでだよ。」

「いちいち癇に障る言い方するわね…。貴方こそ、そういう性格改めた方が良いんじゃないかしら?」

「まぁ、確かに…そうだね。うん、僕もそう思うよ。何時も一言多いんだ。ごめん、気分を害させたみたいで…。」

少し、しょぼくれた様子で甲羅を揺らす姿に、自分の方が大人げない気がして来て溜息が洩れた。

「あの、私の方こそごめんなさい。つい、この状況がうまく飲み込めなくて、半分は八つ当たりみたいに貴方にあたり散らしてしまって…。最近ちょっとした事でもイライラしちゃって、申し訳なかったわね。」

反省の態度を見せる為、頭を下げたところで頭上からとんでもない言葉が降り注いだ。

「あ、もしかして君って更年期?でも…夢友と同い年なら、まだ更年期には早いか…。それとも若年性更年期かな、さっきの怒りっぽ感じからして普通じゃない感じだし。」

私の中で何かが振りきれた。
私は持てる力全て出し切って相手のほっぺたを引っぱたいた。
バチンっと鈍い音が響いた。
私は、夢友の手を取りその場から逃げるように走り去った。
何あいつ…最悪…最低…気持ち悪い!!
人の事、知った様な口で話して、反省したかと思えば、更年期ですって?
ふざけんじゃないわよ!!
どこまで私を見限るのよ、恋の神様はいつまで仕事サボってんのよ!!

第一夢友ちゃんはあんな男を私に紹介してどういうつもりなの!?

イライラが収まらぬまま、私は地上に出て、一番近いカフェに夢友ちゃんを連れ込んだ。
コーヒーを頼んで一口飲んで落ち着いたところで言葉を吐き出す。
ゆっくり、冷静に落ち着いて…。
まずは、彼がどういった人物で何故夢友ちゃんと知り合いなのか、聞き出した。
夢友ちゃんの話によれば、彼と出会ったのは半年ほど前。
取引先の会社でフット軍団の襲撃に合った所を助けてもらったらしい。
足をひねり動けなくなった彼女は、彼らの助けを借りて、無事帰宅する事が出来たようだ。
そこからのお付き合いらしい。
私が言うのもなんだが、夢友ちゃんはとても可愛い、スタイルも抜群。そんな彼女からお礼がしたいからと言われれば、連絡先を教えない相手なんていないだろう…。
まぁ、つまりそういう事で彼らとの交流が始まったようだ。
しかし、彼女には彼氏がいた。
彼らにとっては、なんとも悲しい結末だが、それでも今日まで交流は続いていたようだ。
そして、私が彼氏を欲しがったりしたもんだから、彼女を欲しがってる彼らの中の1人を紹介してきたって訳。
正直、人間でもない相手を紹介してくる事自体が意味不明である。
そして何よりも、私の理想を無視している事に一番難解を示さずには居られなかった。

「取り敢えず、一言言わせて。人間じゃない事は100歩譲って許そう、正義のヒーローだし。だけど、全然私の理想からかけ離れてるんですけど!!」

夢友ちゃんは笑っているだけだった。
そして、小さく首をかしげてみせる。

「本当は良い人だよ?お似合いだと思うんだ!」

…頭がぐらっとして、地面が逆さになった気がした。

これが私とドナテロの、最悪の初対面だった。
明日からまた気が重い。
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