GS:氷室/マスター

□コイビトの境界線
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 小さく耳元に囁くと、その指の動きが止まった。
 頭をおさえているでなく、ただ止まったのだとわかる。

 そろそろと離れて顔を覗きこむ。
 呆けた顔が見る間に赤く染まる。

「まさか、それを言いに来たのか?」
「はい。
 だって、最初に言いたかったから」

 誰よりも近い場所で誰よりも早く、零一さんに感謝したかったから。

「零一さんというひとりの人間がこの世に生を受け……て!まだ、途中です!」

 待ちきれないように抱きしめられ、口付けられる。

「ありがとう」
「れ、零一さんってば!」

 実は言ってからこういう台詞は恥かしくなる。
 言葉を遮るように重ねられ、意識を吸いこまれる。
 深く浅く、長いような短いような時間のあとで、温かく零一さんは私を抱きしめた。

「愛している。
 東雲」

 コドモよりコドモのような言動なのに、行動はオトナで。

 私たちの間の境界線はいまだ曖昧模糊としている。
 スタートラインが違うから私はいつも焦るけど、それでもこういう時は追いついている気がする。
 オトナなのにコドモみたいな零一さんに、生徒でも妹でも友達でもない、当然母親でも姉でもない感情に支配される。

 愛し愛されるという輝ける石を私は手に入れています。

 いつかこの時間が永遠と呼べるように、私は願いつづけます。



 私は氷室零一という男を、ずっと愛しています。
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