GS:葉月/姫条/他

□君と永遠なる幸福を
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 指を軽く押し当てると、家の中にチャイムの響いているくぐもった音が聞こえた。
 これで、5回目。
 だけど、反応は全くといっていいほどない。
 急な仕事とは考えられない。
 昨夜の電話ですこしダルそうにしていたから、今日は家で寝ているはず。
 それも十中八苦、風邪で寝こんでいると私はみている。

「……どうしよう」

 呟いていては、珠美とキャラが被ってしまう。
 て、そんなことを気にしてる場合じゃない。
 今、カギを私は持っていない。
 渡されていない。
 どうすることもできない。
 ……どうしよう。

 戸口で座り込んで悩むこと数十分。

 あと一回。
 あと一回だけチャイムを押して、十分待っても反応がなかったら帰ろう。
 決意して、立ちあがる。

 でも、本当に風邪だったらどうしよう。
 珪クン、1人暮しじゃなかったっけ。
 病気の時って、心細いんだよね。
 でも、ここアパートとかマンションじゃないから管理人さんなんかいないし。
 庭のほうに周ればわかるかな。
 不法侵入かもだけど……。

 チャイムに指をおいたまま、考え込んでいること数十分。

 と、りあえず。
 押してみよう!!

 私が悩んだ末にチャイムを押すのと、ドアが開くのは同時だった。

「…………あ」

 出てきた家主がいつもの呆れたような口調で、「悩みすぎだ」とかなんとか言ってくれるのを期待しつつ、私は下を向いた。

 反応が、ない。
 読み違えた?

「……あぁ、春霞か」

 ぼんやりとした葉月の声が通りすぎる。
 いつにもまして、マイペースな――。

「今日、だったか?」

 なんだろう。
 いつも通りに見えるけど、少し違和感がある。

「まぁ入れ」

 促されるままに、私は葉月の家に入った。
 家の中はあいかわらず殺風景で、なにもない。
 お手伝いさんが家事をやってくれているといっていたから納得は出来るけど、葉月の周りには何もない。
 ただ少し、クッションやなんかが多い気もする。
 やっぱりいつでもどこでも寝れるようにってことかな。

「こっちだ」

 何度も踏み入れた珪の部屋に入っても、やっぱり何か違う。

「ジュースでイイか?」

 葉月は風邪、引いてるんじゃないのかな。

「ねぇ、珪クン?」
「CD、何かかけるか?」

 テーブル越しのベッドに座りかけ、今度はプレイヤーのリモコンを探しだす。

「……珪クンってば!!」

 やっぱりおかしい。
 彼はいつも話すより聞く方専門なのに、今日は全然聞かないし。

 私の声に驚いて、葉月は座りなおした。
 ベッドは掛け物が捲れあがり、主を心細そうに待っている。
 ――わけないか、ただのベッドだし。

 少し皺の寄った白いシーツのベッドで、私は葉月の隣に立った。

「風邪、じゃなかった?
 熱は?」

 彼はいつも通り完結に、ない、と答えた。

「はかったの?」
「……ないけど……」

 返事は短く完結だけど、こういう時は要領を得ない。

「じゃ、はかんなよ。
 体温計は?」
「…………ない」
「ないの!?」

 冗談だとおもいたいが、今の葉月に聞いてもダメかもしれない。
 基本的に寝ることとネコの他はどうでもいいみたいに生きてる人だから。

 こういうときは自分の体温と比べるのがいいんだよね。

――手、かな。
 やっぱり。

「春霞」

 手を弾かれ、隣に座らされる。
 普段は絶対にしない甘い声が、耳元でささやく。
 熱でよくわかっていないのかもしれない。

「な、に?」

 葉月の顔がものすごく至近距離にあって、潤んでいる目もほのかに赤い頬も全部キレイ――。

 いや、熱のせいだよ。
 絶対!
 あ、今ならアレが出来るかも!?

 考え込んでいる私の頭を葉月が引き寄せ、額に当たった。

「け……珪……っ?」

 先を越された!?なに??考えてるのバレてたの???
 あ〜落ち着け、私。
 それよりももっと重要なことあるでしょ!

「すごい熱、高いよ?
 なんで、そんな、動き回ってるの?」

 私の頬に顔を寄せて擦り寄ってくるのは、嬉しいんだけど。

「春霞が低すぎるんだ。
 ……気持ちイイ」

 う…………ぁ……っ
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