GS:葉月/姫条/他

□雪待ちの日
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 温かい部屋の中で立ち昇る湯気に春霞が吸い寄せられる。

「なんや、春霞?」

 驚いたように顔をあげて、焦ったような微笑みが返ってくる。
 別にいつものエスプレッソやんな?

「今日、寒いね」
「せやな。
 暖房ガンガンに入れてんのになぁ」

 部屋の中は暑いくらいだけど、窓から冷気がきている。
 カーテン閉めといたのに、また開けたんか。

「雪でも降りそうだよね〜」
「やなこといいなや」
「え〜雪降って欲しくない?」

 不満だと口を尖らせる彼女の隣に座って、肩を引き寄せる。
 別に深い意味はないねん。
 ただこうするんが今の俺にとって一番自然なカタチなだけや。
 今だこいつは緊張するけどな。

「雪なんて寒いだけやろ。
 喜ぶんは犬と子供だけやで」
「それって、遠まわしにあたしのこと子供っていってる!?」
「そうやないて」

 隣で大人しくしてくれるようになったんはいつからやろ。
 信用されてるて思うと嬉しいが、信用されすぎるもカナシイな。

「じゃ、犬?」
「だからちゃうて」
「でも、近所の犬は雪降ると犬小屋から出てこないよ」

 だから、雪が降ると犬が喜んでるというのはウソだと春霞はいう。

「犬やなかったら、猫が走りまわるんか?そらオカシイやろ」
「猫はコタツの中よ」

 今度はさも当然といわんばかりの口調で返ってくる。

 なんやようわからんけど、煙に巻かれてる気がする。

「雪降らないかな〜」

 窓の外を見ようとするから、腕を伸ばしてカーテンを閉める。
 なにするの?と振りかえる顔が焦りに変わる。

「窓の外みるの禁止や」
「え〜オーボー!!」

 なんといわれようと。
 春霞が外見てると、ホンマに降ってきそうやわ。
 こいつが喜ぶんは嬉しいけど、やっぱ寒いんはきついな。

 それにせっかく二人きりで部屋におるのに、こっちを見てくれないてのもな。

「まどか……」
「なぁ、キスしてもええ?」

 部屋の中が温かいせいか、春霞の口の中は妙に冷たくて心地よい。
 倒れこんだ腕の中で、大人しすぎる様に顔をあげると、春霞はカーテンに視線を向けている。

「雪、降らないかな……」

 ええかげんにしてくれへんと、俺は雪にまで嫉妬しそうや。
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