GS2&4:読切

□あなたとフォークダンス(仮)
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 初夏の風が小さな渦を足元で作っている中、柊くんは私の手を取った。

「姫、お手をどうぞ?」
 そう言って微笑む柊くんは格好良くて、どきどきする。

 学校での柊くんは、劇団はばたきの座長の時とは違って、普通の男の子になる。

 役ではなく、普通の。そうすると、彼はとてもおちゃめで可愛い人なのだ。

「えっと、その…」
「ふふっ、赤くなって、可愛らしいですね」
 絶対面白がっているってわかっているのに、私は視線を外せない。

 だって、この笑顔を見たら、視線をそらすなんてできるわけない。

 学校でしか見られない柊くんの顔。

「…ずっと、こうしてあなたを見ていたいな…」
 小さく零された声がまるで心を読まれた気がして、目を見開いた。

「っ、もう、からかわないで!」
「ふふっ」
 素の柊くんの笑顔を皆に教えてあげたいと思っていたのに、今はそうしたくない。

 私だけに向けてほしいなんて、おかしいな。
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