GS:葉月/姫条/他

□最後のピース
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「おつかれ〜!!
 今日も良い絵が取れたよ〜、葉月ちゃん」

 スタジオに響くカメラマンの声で、オレはほっと息をついた。
 顔には出ないけれど。

 きょろきょろと辺りを見回すと、暗がりからマネージャーが姿を現す。

「おつかれさま。
 次のスケジュールだけど……」
「あいつは……?」

 マネージャーのいた方に目を凝らすと、椅子におまえは座っていた。
 少し俯きかげんで顔が見えない。
 仕事の後、一番にみたいのは春霞の笑顔だけなのに。

 近づいてみると、春霞は幸せそうにぐっすりと眠っていた。
 いくらオレのマネージャーが隣にいたとはいえ、スタジオには男も多いんだぞ。
 あいかわらず、警戒心の欠片も持ち合わせていないんだな。

「ああら、寝ちゃったの。
 彼女?」

 後ろから声をかけられて、オレはスタッフが集まってきたことに気づいた。

「カワイ〜ぃ」
「これが例のお姫さんか」

 好奇の目より、問題だ。
 おまえ、寝顔も無防備なんだぞ。
 ……このままじゃ、危険すぎる。

 抱き上げると、ふっと瞼が開いた。
 そのままふにゃっとした力の抜けたような笑顔になって、また閉じて眠りこむ。
 のんきな奴だ。
 オレ以外の前でそんな顔をしたら、襲われるぞ。

「……おつかれ」

 椅子の上の春霞の荷物を持ち、足早にオレはスタジオを出た。
 控え室には、行きたくない。
 オレの荷物は後だ。
 かといって、春霞を抱えて外に出るのはイヤだ。
 この寝顔を誰にも見せたくない。

 隣のアルカード、たしか裏口から繋がってたよな?



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