GS:葉月/姫条/他

□Sleeping Beauty ?
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 先に来たときより、お前は安らかに眠っていて、タオルももう取ってあった。
 夢に微笑む春霞を見て、自然と俺も微笑んだ。
 なんで春霞の笑顔はこんなに俺を幸せにさせるんだろう。
 春霞の笑顔が俺にとって最高の宝石……。

 ゆっくりと開いた瞳には、いつもの生気が戻っていて。
 やっと俺は安堵した。

「ふわぁ〜。
 よく寝た……。
 もう寝てるの、飽きたな……。
 こういう時、誰かお見舞いに来てくれると、天使に見えるのに……はぁ〜」
「独り言、長いな」

 俺といるときもよくしゃべるけど、1人でもよくしゃべるんだな。
 他の女はうるさいだけだけど、春霞のは……嫌じゃない。

「わぁ!珪くん!?……いつから、そこにいたの?」
「……10分くらい。
 弟がいれてくれた」

 そういうと、何か悪いことでもあるのか、困ったように春霞は問いかけてきた。

「……あの、もしかして、ねてるとこ、みてた?」
「ヨダレたらしてた」
「……ホント?」
「ウソ」

 掛け物を引き上げて、顔が半分も隠されてしまった。
 俺、悪いこといったか?

「………………」

 お互い黙り込んでるのって、今は少し居心地が悪い。
 いつもはお前がずっと話してくれてるってこと、改めて実感してしまう。

「……顔、少し赤いな。
 熱あんのか?」

 いつもいつも一生懸命な春霞。
 なんでそんなに頑張るんだろう。
 どうして俺といてくれるんだろうなんて、今まで考えもしなかった。

「ううん。
 もう平気。
 あっ……」

 手、勝手に動いてた。
 あの時より本当に下がっているのかとか、今も無理しているんじゃないかとか。
 いろいろ考えたけど、なんだろ。
 そんなのどうでも良くなってた。

「……こうすると、気持ちいいだろ?
 俺、手、冷たいから」

 まだ少し高いけど、ほとんど下がってて、やっと俺は安心できた。

「……な?」
「……うん」

 素直に肯く春霞の笑顔はいつもより柔らかくて、その笑顔に俺のほうがとろけてしまいそうだ。

「じゃあ、俺、もう行く」
「もう帰っちゃうの?」

 俺も行きたくないけど、スタッフも待ってる。
 それに、春霞はやはり少し無理している気がする。
 人に気をつかいすぎる春霞の優しさのせいだ。

「撮影、抜けてきたんだ。
 戻らないと、そろそろバレる」

 俺を気遣ってくれた休憩時間分、今度はもう少し真面目に仕事するか。

「そうなんだ……あっ、お見舞いありがとう」
「……早く、よくなれよ」

 帰り際、春霞の額に小さなオマジナイをかけてやる。



*



 風邪が俺に移って、春霞が元気になるように。
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