GS:葉月/姫条/他

□君と永遠なる幸福を
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 私は心臓がバクバク騒ぎ出し、パニック状態になりかける。

「お、大人しく寝なさい!」

 そして、葉月をベッドに押し倒していた。
 私は絡めとろうとする腕を逃れて、部屋の入口へ逃げた。

「……春霞」

 甘い声が聞こえる。
 ダメ。
 振り向いたら、葉月の目を見たら、私、絶対に逆らえない!!

「タオル、もってくる!!」

 部屋を出て、お手伝いさんを探すが、当然のようにいない。
 片っ端から扉という扉を開けて、タオルを見つけ出し、キッチンの流しの水で冷やした。

 戻ってくると、葉月はさっき私が出ていったときのまま、掛け物もかけずにベッドに転がっている。
 ――そのまま、じゃない。
 む、胸がはだけてるっ

「け、珪クン!」
「……春霞」
「ちゃ、ちゃんと、ぱ、パジャマ着ないとダメ!!」
「……いらない」
「〜〜〜それじゃ、風邪、治らないよ」
「……春霞がいてくれるなら、いい」

 こういう時でなければ、すごく嬉しいセリフだけど。

「いるから。
 治ってもココにいるから。
 だから、パジャマ、着て?」

 なんだか、泣きたくなってきた。

 ふと、葉月が顔を上げて、にっこりと微笑んで。
 その腕で私をも引き倒した。
 ふわりと抱きとめられたのに、身動きできないようにしっかりと固定されている。

「……春霞」

 何度も私を呼ぶ声。
 それが哀しいくらい優しい。

 額から、潤んだ目元、頬、唇の端へと順に、彼の柔らかな感触が移ってゆく。

「ごめん、ね」

 落ち着いた心から零れてくるのは、謝罪の言葉だけだった。

「春霞?」
「……ごめん」
「どうして、泣く?」

 目元に溢れる水を彼が舌ですくいとっていくのに、私の中には謝罪の言葉しか残らない。

「だって、私の風邪、移しちゃったんでしょ?」
「オレに、移した?
 違う……」
「違わない。
 ……ごめん」
「謝るな。
 俺が、移してもらったんだ。
 オレが、勝手に――」


* * *
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