GS:葉月/姫条/他

□biginning
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 さっきまで尽にからかわれながら歩いていた道路が、急に動き出す。
 動く、というのは変か。
 ようやく、覚醒してきたという感じの方が近いかもしれない。
 珪くんと歩くのは、少しドキドキする。
 綺麗、だから。

「どんな?」

 聞き返されているのに、そのときの私の視線は彼の口元に注がれていた。
 同時に夢を思い出す。

 どうして、今日に限って覚えてるんだろう。

「な、内緒」
「……教えて、くれないのか」
「う……ごめん」

 明らかに落胆している姿にほんの少し罪悪感が生まれる。

 でも、本人に向かって、アナタにキスされる夢を見ました、なんて言えない。

「顔、赤いぞ?」
「え!?」

 顔に両手を当てて俯いてしまった私は見なかった。
 珪くんが、蕩けるような眼差しを注いでいたことも、その中にかすかに哀愁を秘めていたことも。

「冗談」
「ええ?」

 見上げると、楽しそうに笑っているだけで、からかわれたのだと知る。

「もう、からかわないでよ!!」
「はは……っ」

 笑う珪くんと顔を赤くしながら怒る私は、とっても恋人同士に見えてしまったというのは、その後、友人に聞いた話だ。

 一緒にいるとドキドキして。
 どんな顔をしているのか気になって。
 笑ってくれるのが嬉しい。

 これはなんていう気持ちだろう。

「恋じゃないの?」
「わかんないよ」

 頭を抱える私にクラスメートはこういった。

「でも、葉月は春霞のこと好きだと思うよ。
 いっつも私、睨まれるんだもん」

 真相は、今、振りかえればわかるというが。
 丁度先生が来て、その話は保留になった。

 本当はどうなのか、知りたいような知りたくないような。
 悩んでいたら、もう授業に集中するのは無理だった。

 ねぇ。
 本当の恋って、どんなもの?
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