GS:葉月/姫条/他
□biginning
2ページ/4ページ
さっきまで尽にからかわれながら歩いていた道路が、急に動き出す。
動く、というのは変か。
ようやく、覚醒してきたという感じの方が近いかもしれない。
珪くんと歩くのは、少しドキドキする。
綺麗、だから。
「どんな?」
聞き返されているのに、そのときの私の視線は彼の口元に注がれていた。
同時に夢を思い出す。
どうして、今日に限って覚えてるんだろう。
「な、内緒」
「……教えて、くれないのか」
「う……ごめん」
明らかに落胆している姿にほんの少し罪悪感が生まれる。
でも、本人に向かって、アナタにキスされる夢を見ました、なんて言えない。
「顔、赤いぞ?」
「え!?」
顔に両手を当てて俯いてしまった私は見なかった。
珪くんが、蕩けるような眼差しを注いでいたことも、その中にかすかに哀愁を秘めていたことも。
「冗談」
「ええ?」
見上げると、楽しそうに笑っているだけで、からかわれたのだと知る。
「もう、からかわないでよ!!」
「はは……っ」
笑う珪くんと顔を赤くしながら怒る私は、とっても恋人同士に見えてしまったというのは、その後、友人に聞いた話だ。
一緒にいるとドキドキして。
どんな顔をしているのか気になって。
笑ってくれるのが嬉しい。
これはなんていう気持ちだろう。
「恋じゃないの?」
「わかんないよ」
頭を抱える私にクラスメートはこういった。
「でも、葉月は春霞のこと好きだと思うよ。
いっつも私、睨まれるんだもん」
真相は、今、振りかえればわかるというが。
丁度先生が来て、その話は保留になった。
本当はどうなのか、知りたいような知りたくないような。
悩んでいたら、もう授業に集中するのは無理だった。
ねぇ。
本当の恋って、どんなもの?