GS:氷室/マスター
□ココロの境界線
2ページ/4ページ
動こうとすると、抱きしめる手に力がこもる。
引き剥がそうとすると、聞いた事もないくらい甘い声が、吐息がかかる。
(ど、どうしよう……)
あたしは零一さんの腕の中で、もうすでに混乱している。
熱に浮かされて、もうらしくない予測不可能な事態ばかり起きてしまって。
最終手段で昔、弟にしてやったように背中を叩いてあげたんだけど。
まぁそれも成功で、零一さんからやすらかな寝息が聞こえて、子供みたいなあどけない笑顔に見惚れちゃったんだけど。
抱き枕よろしく眠られていることに気がついた時には、すでに手遅れで。
どう動いても、離してくれない。
「零一さん」
小さく声をかけても目を覚まさない。
ただ愛しそうに、守るように抱きしめられて。
至近距離の零一さんの顔は、幸せそうで楽しそうでいつもと全然違って面白いけど、あたしのときめきがジェットコースターより早くなってく。
「零一さん、離してください」
小さく囁くと、うわごとのままに拒否される。
うっすらと開いた瞳は飴玉よりもとろけて、眼差しであたしは止めをさされる。
「もぅ、どっちが子供なの」
重ねた唇から伝わってくるのは、以外に熱でなく冷たい感触。
無意識に抱き寄せられ、あたしたちは熱に浮かされキスをする。
正気だったら、きっと怒るね。
でもあたし、目の前で倒れられるのはこれっきりがいい。
目を覚ましたら、いつものアナタに戻って。
「……春霞」
その瞳で、その声で、その腕で、これ以上あたしを狂わせないで。
* * *