if 〜夢見る子供のお話〜
□未練は町と一緒に捨てろ
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“悪魔の子”のお話 〜未練は町と一緒に捨てろ〜
クウはあてもなく歩いていた。知人は皆、クウのことを知らない。
クウにとっては知人でも、その逆は違う。見知らぬ赤の他人でしかない。
見慣れた町を歩く。クウはどうしても、別の町に行きたくなかった。
この生まれ育った町に、まだ未練があったのだ。
歩いていると、見知った人の顔を見かける。見かける度に、胸が痛んだ。
彼らとはもう関われないと、わかっていたから。
痛みはいつしか、怒りに変わっていた。それは、リクとカイのときと同じように。
「ボクはぁ、皆を覚えているのにぃ・・・なんで皆はぁ、ボクのことをぉ覚えてないのぉっ!!」
周囲にいた人がいっせいにクウを見た。クウは気付かないのか気付いているのか、それらを無視する。
泣けないもどかしさがクウの怒りを煽る。
そして本人が気付かぬほど少しだけ、後悔の気持ちが怒りを後押しした。
クウが爆発するには、それだけで十分だった。
「ッア゛ー!!こんな町・・・こんな人間・・・なくなってしまえぇー!!!」
周囲でクウを見ていた人々がざわつく。
いかれているとか、気違いだとか、なんなんだとか、やれるもんならやってみろとか。
それぞれが影で言いたい放題言っていた。
あとに待つのが、死だとも知らずに。