if 〜夢見る子供のお話〜

□未練は町と一緒に捨てろ
1ページ/6ページ

“悪魔の子”のお話 〜未練は町と一緒に捨てろ〜




クウはあてもなく歩いていた。知人は皆、クウのことを知らない。

クウにとっては知人でも、その逆は違う。見知らぬ赤の他人でしかない。

見慣れた町を歩く。クウはどうしても、別の町に行きたくなかった。

この生まれ育った町に、まだ未練があったのだ。

歩いていると、見知った人の顔を見かける。見かける度に、胸が痛んだ。

彼らとはもう関われないと、わかっていたから。

痛みはいつしか、怒りに変わっていた。それは、リクとカイのときと同じように。

「ボクはぁ、皆を覚えているのにぃ・・・なんで皆はぁ、ボクのことをぉ覚えてないのぉっ!!」

周囲にいた人がいっせいにクウを見た。クウは気付かないのか気付いているのか、それらを無視する。

泣けないもどかしさがクウの怒りを煽る。

そして本人が気付かぬほど少しだけ、後悔の気持ちが怒りを後押しした。

クウが爆発するには、それだけで十分だった。

「ッア゛ー!!こんな町・・・こんな人間・・・なくなってしまえぇー!!!」

周囲でクウを見ていた人々がざわつく。

いかれているとか、気違いだとか、なんなんだとか、やれるもんならやってみろとか。

それぞれが影で言いたい放題言っていた。

あとに待つのが、死だとも知らずに。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ