if 〜夢見る子供のお話〜

□人は徐々に忘れてく
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悪魔の子のお話 〜人は徐々に忘れてく〜



僕の好きな人が、行方不明になった。

僕は悲しくて、でも涙は流れてくれなかった。





「ねぇ、聞いた?連続行方不明事件のこと。」

「聞いた!みんな塾の帰りに、いなくなっちゃったんでしょ?夜遅くだから、もしかして誘拐かもよ?」

「こわーい。ねぇ、吏紗大丈夫かなぁ?」

「早く見つかるといいよね。」

今学校中が、この話で持ち切りだった。

連続行方不明事件。

みんなそう呼んでる。

最近、この学校の生徒が4人、次々と行方不明になっている。

その大半が夜遅く、塾帰りの生徒だった。

その噂を聞いた親の中には、我が子を塾に行かせないようにしている親もいるらしい。

この事件の真相は、何一つわかっていない、という噂が流れるくらい、この事件は謎だらけだった。

「おい、昭信。」

僕の友達の賢治が話しかけてきた。

「ん?」

「中森、早く見つかるといいな。」

「うん。」

賢治は僕に、耳打ちでそう言ってきたから、僕は素直に、頷いた。

僕は、中森さんが好きだった。片思いだけど。

本名、中森美里。成績優秀で、男女構わず誰にでも優しい人だった。

彼女は昨日の夜、行方不明になったらしい。

賢治は僕が落ち込んでいるのを悟ってくれたのか、今日一日気遣ってくれていた。






なぜ中森さんが行方不明になったのだろう、と思う。

中森さんは優しいから、みんなに好かれていた。

だから中森さん自身の意思で行方をくらましたとは、僕には思えなかった。

「笹倉、笹倉。」

ふと気付くと、先生が僕を呼んでいる。そうだ、今は授業中だった。

「・・・あ、すみません。何でしょう。」

「何でしょうじゃないだろう。早く読みなさい。」

「・・・・・すみません、聞いてませんでした。」

クラスメートが笑い出す。無性に恥ずかしかった。

「もういい。座れ。安堂、読みなさい。」

先生には怒られたけど、やっぱり僕はその後も中森さんのことを考えていた。
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