◇不幸な少年の逆襲◇




「ん・・・」
ツンが朝起きると、
「おはよー、ツン」
「ッ!!!?」


イズが馬乗りになっていました。




「な、なんでお前がここにっ!?」
「trick or treat!!」
動揺しているツンをよそに、イズは満面の笑みでそう言った。
「っあー!てめっ」
「んー?どーかしたー?
今日一日、みんなにそれを言って回るつもりだったとか?」
ツンがうぐ、と怯む。
どうやら図星だったらしい。
「ほら、お菓子くれよ」
「誰がイズなんかにくれてやるか!」
ふんっ、とツンはそっぽを向いた。
しかしイズは笑みを崩さずに・・・むしろ吊り上げて、言う。
「ふーん。そっかー、ツンはイタズラがいいのかー」
「は?・・・っておい!なんの真似だイズ!!」
ツンがイズの方を向いた瞬間、ツンに馬乗りになっていたイズがツンの両手を掴み頭の上で組み、顔
を近づける。
するとみるみるうちに、ツンの顔が赤くなった。
「えーだってイタズラがいいんでしょ?」
「ちがあーう!どっちも拒否だっつの!」
「聞こえないなー?」
白々しくスルーするイズに対し、ツンはじたばたと抵抗するが寝起きということもあり、十分に力が
出せないでいた。
「分かった、菓子やるから、今すぐどけっ!」
「やだね。お菓子の代わりにツンをもらうから」
そう言ってイズは片方の手でツンの両手を抑え、もう片方の手で掛け布団を剥いだ。
「寒っ」
急な寒さに、ツンは体を縮こませた。
「めずらしいね、ツンがフリル付きの服だなんて」
「そ、それはっ!コンがふざけて買ってきてっ!普段着るわけにいかないからこうして・・・!」
慌てて弁解をするツンは、フリル付きのロング長袖Tシャツだけ、という姿だった。
「元は丈が長めのシャツなんだろうけど、ツンが着ると少し短めのワンピースみたいだね」
「なっ・・・!てめー、馬鹿にしてんのか!」
「いいや、褒めてるんだよ。小さくて可愛い、って」
「んなっ・・・!」
怒りと照れでツンの頬が赤く染まる。
イズは小さく笑って、その頬にキスをした。



「さぁーてそろそろ、お引き取り願おうかぁ?」
どこからともなく、声。
見下すような、嘲笑するかのような。
しかしそれでいて、少し怒っているような。
「ギル!!」
「ちっ、もう来たのか・・・」
そう、声の主はギル。
いつの間にか二人の横に、ギルが立っていた。
そして二人はそれぞれ対の反応をした。
「てめーの連れも来るぜぃ」
「連れ・・・?」
その言葉の意味を理解するよりも早く、ツンの部屋のドアが勢いよく開いた。
「イズッ!ツンさんになにしてるのっ!」
「げ、アム・・・!」
「げ、とはなによ。ギルさんが、『イズがツンを襲ってる』って言うから止めにきたのよ」
イズがギルを睨む。
ギルは不敵な笑みを浮かべてイズを見返す。
「ツンさん、大丈夫ですか?」
「ん、あぁ、ヘーキ」
イズを怒っていたトーンよりもかなり柔らかいトーンでアムはツンに尋ねた。
「ツンさん、ほんとにごめんなさい!馬鹿なこいつに代わって謝ります!」
「いーよ、アムは別に悪くねーし。むしろ止めに来てくれたしな」
「あ、ありがとうございますっ」
「礼を言うのはこっちだって。ありがと、アム」
へこへこするアムに、ツンはニカッと笑ってみせた。

「さぁて、じゃあ行くぜぃ、ツン」
事も一段落したあたりで、ギルが言った。
「おーう!じゃあな、アム!・・・・・と、イズ」
「はいっ。さよなら、ツンさん」
「ついでみたいに言わないでほしいんだけど」
笑顔で返したアムとは対照的に、イズはブスッと返した。
「事実、ついでだし」
しかしツンはそれをさらりとかわし、ギルと共にどこかへと消えた。

「お菓子もイタズラもやり損ねたし。あとちょっとだったのになー」
「お菓子?っあ、そーだった!クッキー昨日焼いたのに、持ってくるの忘れちゃった!」
ツンの部屋に取り残された二人は、コン、ポエ、ルーに挨拶をし、家をあとにしていた。
「あーどうしよう、ツンさんお菓子好きだからあげようと思ってたのになぁー・・・」
「なぁそれ、甘い?」
「うん。・・・あ、ちゃんとイズの分もあるよ?」
本当はイズの方が本命でツンの方はついでなのだが、そんなことをアムが言えるはずもなく。
そしてまたその事実に、イズが気付くはずもなかった。
「じゃあ、ツンの分もくれよ。それくらいのイタズラはいいだろ?」
「んー・・・、いい、けど。ツンさんには内緒よ?」
「やった!じゃ、早くアムん家行こうぜ!」
先程までの落ち込みはどこへやら。
菓子につられたイズは、元気よくアムの家へと向かっていったのだった・・・・・。




end.

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