短編
□あまのじゃく
1ページ/1ページ
自分の我が儘でまた別れ話を切り出したくなってしまった。
慎吾が、忙しいって言ってる理由はよく分かる。だって受験生だし。
それでも電話が欲しくて、声が聞きたくてかけるけど、留守電で涙が出そうになる
これだから長期休み嫌だ。学校なら毎日会えるのに。
―ブブッ ブブッ …
携帯が突如になりだした。
見れば慎吾だ
あたしがかけたのに対してのかけ直しているだけで。なんか悔しくてそれを留守番電話サービスに転送してしまう
素直じゃないなって思いながら、その留守番電話サービスに残った慎吾の声を再生してみる
『電話、出れなくてごめん。予備校行っててさ… 今日はもう家にいるから、時間あるならちょっと話そうぜ。』
淡々と喋る罪な男
ちょっとかけたくなってしまう。けど手が震えて中々通話ボタンが押せない。
タイミング悪くお風呂に入ってたら、トイレ行ってたら、誰かと話してたら‥‥
何でこんなにも慎吾に電話かける時は辛いんだろう……
そう思ってると、また電話が鳴り出す。あたしは慌てて、通話ボタンを押して、相手との会話が始まってしまった
「は、はいっ」
『アハッ、どうした?そんなに慌てて』
慎吾だ!
「慌ててないよ!」
『声も震えてるし‥そんなに嬉しい?』
「なっ‥‥自意識過剰」
『はいはい』
慎吾が笑う。その姿が目に浮かんで思わずあたしまで微笑んでしまう。こんなにも慎吾の声は安心するんだ、なんて思った
『通話ボタン、中々押せなくってさ』
「、え?」
『タイミング悪かったら、ヤじゃん。』
「そうだけど…じゃあ、何でまたかけてきたの?」
『窓、あけてみ』
まさか。また期待させる言葉を、と思って窓を見る。暗闇から誰かがあたしに手を振っている。
眼鏡を装着し、再度また見ると慎吾だった
『予備校帰りに寄ってみたら、電気ついてたから』
「…ストーカーっぽい」
『失礼な!…まぁ、元気そうで何より』
「下行っても、良い?」
『おいで』
素直になれた自分に、拍手
--------------
90106 啝樹