すばらしきこのせかい
□変わらぬ街並みの中で
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「ダメだよ。門限あるんだもん、うち。お母さん怖いんだから。」
立ち上がって身を引く。
「言えば離すって。」
ネクも立ち上がった。
「ダ、ダメ。もう帰るっ!」
「言わなきゃ離さない。」
シキは本当に困り顔で目を泳がせる。
本当に、もう帰らなくてはいけない時間だ。
「ホントにダメなの。もう帰らなきゃ。だって、もし遅れて怒られて、ネクと一緒だったことバレたら…そしたらきっと…お母さん、ネクと付き合うこと反対するもん。そしたら…」
そこでハッとして、慌てて胸の前で手を振った。
「ご、ごめんっ! ネク何にも言ってないのに、勝手に“付き合う”なんて…」
ネクは掴んでいた手の力を少し抜いた。
「…送るよ。家、どっち?」
「え?」
「遅れて、付き合うの反対されたら困るだろ?」
「…ネク…」
シキも引っ張る力を抜いて、真っ直ぐにネクを見る。
「ネク…好きだよ。」
「え?」
突然言われたことに驚いて、聞き返してしまった。
シキは俯いて、少し怒ったように言う。
「もー! また聞こえなかったの!? 3回も言わせないでよ!」
「聞こえた。聞こえたけど…じゃあ、さっきのって…」
こくん、とシキは頷いた。
恥ずかしそうに目を逸らしているシキの顔を覗き込む。
「シキ…。」
呼ぶと、シキはちらっと目を向けた。
潤んだその目をじっと見て、ネクは言った。
「シキ。オレも…好きだよ。」
見つめ合う二人。
ややあって、シキが声を上げた。
「あっ!大変! 門限に遅れちゃうっ!!」
「よし! 走るぞ!」
走り出した二人の頬は赤い。
その顔は、つい先日まで忘れていた、未来への希望で明るかった。
「シキ、そいつ動かせよ、にゃんタン。」
「えっ?」
「乗って行けばラクだろ?」
「えー? にゃんタン大きくするには、ネクも力合わせてくれないとダメなんだよ?」
「疲れるの嫌いなんだよネ。」
「えー!? じゃあ私も疲れるのキラーイ!」
「動けよ、にゃんタン!」
「そーだよ、気合いだよ! にゃんタンっ!」
二人して、走りながらにゃんタンを小突く。
ぬいぐるみは小突かれるまま、揺れるばかり。
アハハハ、と二人の笑い声が、街並に溶けた。
カハッ (あまりの甘さに作者吐血)
甘くなるとは思っていたさ。
でもっ!
想像以上に甘くなってしまった…。
うっ…、デレデレだよ、こいつら。
いや、いいんだけどね。
byつきしろ