すばらしきこのせかい

□雛祭り
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 有無を言わせず隣の部屋に押し出された。
 手渡された服を眺め、ネクは考え込んでしまった。

 用があるからと呼び出され、用がなくちゃ呼んじゃいけないのかと連れて来られ、雛祭りのパーティーらしきものを始めて、その雛祭りの為に女物の洋服を着ろと言われた。
 なんだよ。
 あいつ、前から分かりにくい奴だったけど、ますます分からない。

 どうするべきか考えていたらドアの向こうからヨシュアが呼びかけてきた。
「ネ〜クくん。まだかなぁ。…お腹空いたな〜。早く食べないと、美味しくなくなっちゃうな〜。捨てちゃうのは勿体無いし、何より環境によくないよね。ごみ問題が叫ばれている昨今、食べられる筈のものを食べずに捨てるっていうのはどうかと思うんだよね。やっぱり日本人としてそういう事を真面目に考えるべきだよ。君もそう思わないかい?」
「食べる!料理はちゃんと食べるから捨てなくていいだろ!?」
「君がそれを着て出てきてくれないと捨てることになるよ?」
「これ着なくても食えるだろ!?」
「…コンポーザーとしての命令。それを着ないと食べさせない。」
「お前!なんて横暴なんだよっ!」
「何と言われても構わないよ。君がそれを着てくれるならね。」
 埒が明かない。
 がっくりと項垂れ、ネクはもう一度服を見た。
「…今だけだぞ。」
「なに?」
「今だけ、ここでだけ、一回だけだ。」
 諦めてそういうと、ヨシュアの舌打ちが聞こえた。
「!?今舌打ちしたろ!」
「嫌だなァ、ネク君。勘ぐりすぎ♪」




 女物の洋服に着替え、部屋を出るとヨシュアはニコニコと席を指した。
「さ、始めようか。」
「………納得がいかない。」
「そんなに似合ってるのに納得がいかないなんて。贅沢だね、ネク君って。」
「…もういい…。」
 溜め息をついて横を向く。
 その顔の前にちらしずしが差し出された。
「さ、食べようか。」
 憮然としてそれを受け取り、食べ始める。
 化粧を要求されなくて良かった。とか思いつつ。

 半分くらい食べた所でヨシュアが言った。
「ねえ、ネク君。雛飾りって何を模倣したものか知ってる?」
 また得意のうんちくか、と軽く眉上げ、ネクは答えた。
「結婚式だろ?それくらい知ってるよ。」
「そう、それは良かった。」
 何が良かったんだ?と食べている手を止めてヨシュアを見る。
 すると。
「ネク君はお雛様役だよね。女の子の服着てるんだもの。とすれば僕はお内裏様って事になるね。」
「…その為に俺にこれ着せたんだろ…。」
「それが分かってるのなら話が早いな。お雛様とお内裏様がいて、料理がある。…つまり、これは結婚の宴だよね?」
「!?」
 ニッと笑うヨシュア。
 じりじりと体を寄せる。
 ネクは軽く青ざめて身を引いた。
「君が洋装なんだから、やっぱり披露宴も洋風にしないとね。…だから…。」
「だ…から?」


「誓いのキスをしようか、ネク君。」












今更ですが雛祭りネタ^^
好きカプアンケート一位だったしね♪
byつきしろ


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