ガンダム00

□砂塵の舞う夜
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 ソランは何かの物音で目が覚めた。
 眠い目を擦って身を起こすと、すぐ近くでナザレが起きていた。
「…どうしたんだ?」
 まだぼんやりした視界でナザレを見る。
 するとナザレも眠そうな声で答えた。
「…目が覚めちゃって…なんか眠れないんだ。」

 ごおっと風が音を立てた。
 ソランはビクッとしてドアの方を見た。
 そしてまたナザレの方に視線を移した所で気が付く。
 ナザレの隣に寝ていた筈のカウスがいない。

 さっきのアリーの話を一気に思い出した。
 幽霊が子供に化けて、隣の子供を喰うのだと。

 まさか、と思い直して何か話しかけようとナザレの顔を見ると、その唇に何かついているのが見えた。

 血!?

 ソランは口を半開きにしたまま固まった。
 その時、ナザレのお腹がクゥ〜っと音を立てる。
「…腹減ったな。」

 この国は貧しく、子供達はいつでも腹を減らしている。
 それはソランも同じだ。
 しかし、この時のソランにはそんな事を考える余裕はなかった。

 喰われるっ!!

「わああああ!!」
 ソランは弾かれたように逃げだした。
 ドアの外に出て、明かりのある部屋を目指す。
 ひとつだけ明かりの漏れたドアを見つけ、そこに駆け込んだ。
 そこではアリーがのんびりと本を読んでいた。

 息を切らしながら駆け込んできたソランを、なんだコイツ、という風に眺める。
「…どうかしたか?」
「ナザレがっ…ナザレとカウスがっ!喰われたっ!!」
 ガシッとアリーの服を掴む。
「…はあ? 何寝ぼけてやがんだ。」
「ナザレが偽物なんだ!早くしないと皆喰われる!!」
 さっきの話か、とアリーは呆れ顔でソランの頭を小突いた。
「んなわけねーだろ。怖い怖いって思ってるから、んな夢を見んだ。早く寝ろ。」
「ホントなんだ!!ナザレが…。」
 そう言いかけたところに、ドアが開いた。
「ソラン?」
 覗きこんだのはナザレだ。
 ソランは顔面蒼白になり、まだ椅子に座ったままのアリーに必死でしがみついた。
 ナザレはアリーの姿を見ると、おずおずと部屋に足を踏み入れた。
「あの…。」
 何を言おうか困っている様子のナザレをじっと見て、アリーは口角を上げた。
 立ち上がって、ポンとソランの頭を押さえてナザレに歩み寄る。
 ソランは「危ない。」と言いかけて、しかし恐ろしさに固まっている。
 ナザレの傍まで行くとアリーは身を屈めた。
 ソランの視点からは、アリーの背中しか見えない。
 アリーがナザレの頭を撫でたように見えた。
 くくくっとアリーの笑い声がする。
 ソランは少し恐怖心が治まり、二人を覗き込んだ。
 笑いながらアリーが言った。
「お前、唇切れてるぞ。」
 え?とナザレが手の甲で唇をぬぐった。
「あ、ホントだ。」
 クゥっとまたナザレのお腹が鳴った。
「…腹減ったのか…。しゃーねーな。」
 他の奴には内緒だぞ、と言いながら、アリーはチョコレートを出してひとかけナザレの口に放り込んだ。
 そして振り向いて、ぽかんと見ているソランの口にも放り込む。
「…ナザレ…本物…か?」
「ソランどうしたんだ?いきなり出てったから、びっくりした。」
 ソランはほっと安堵の息を漏らし、そしてまた思い出した。
「じゃあ、カウスは!?」
 そう言ってアリーを見上げると、くいっと顎で部屋の隅を示した。
 ソランとナザレがそちらを向くと、そこにはカウスが寝ていた。
 こんな所で寝てたのか、とやっと安心してソランがカウスに歩み寄っていくと、その背中にアリーが声を掛けた。

「そいつが生きてるって保証はねーけどな。」
 ニィっと片方の頬を引き上げている。
 また驚愕の表情になったソランに、ゆっくりと近づきつつ言う。
「…なあ、坊主。俺が最初からニセモノだったら…どうする?」

 ガシッと二の腕を掴まれて、ソランは二度目の叫び声をあげた。




 アリーの話した怪談は、全くの作り話だった。
 もちろん子供たちを、特に他の話を怖がる様子のなかったソランを怖がらせる為に即興で作った話である。
 それから暫くの間、アリーはソランの顔を見る度に噴き出していた。











刻の止まった部屋シリーズで、刹那が子供の頃に怖がった怪談、というのを考えてみました^^
別枠で書いてみましたが、フェルトはこの話をアリーから聞いたと言う事でいいんじゃないでしょうか(笑)
byつきしろ


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