その他

□契約
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(アリス×オズ・ネタバレ)


†††契約†††



 暗い窓辺でオズは外を見ていた。何を眺めるでもなく、ただボーッと。


 胸の刻印は進み始めてしまった。

 今、それは痛みも感覚も発しない。

 でも、もう、進んで行くのだ。確実に。

「ハハ…。」

 乾いた声で笑ってみる。

 怖くないわけじゃない。

 それでも絶望もしていない。

「…うん。タフだよな、オレって奴は…。」

 絶望なんて、とうの昔にこの身体から追い出してしまったんだ。





 カチャッ。



 ノックもなしにドアが開いた。

 入って来たのはアリスだ。

 彼女はドアを閉めると、オズからは目を逸らしボソッと言った。

「お前…愛されたかったのか?」

「え?」

 いきなりの問いに戸惑うオズ。

「父親に、愛されたかったのか?」

 ハッとした表情で固まり、オズは口を噤んだ。

 オズが答えないことに少々腹を立てながら、アリスはまた聞いた。

「嫌いだって言われたんだろ?」

「…何…で、その話…」

 固まったまま、オズは問う。

「あいつに聞いた。」

 アリスがさらっと答えると、一転、オズは笑顔を見せた。

 にこっ。

「そっか。」

 その顔を見て、アリスはますます不機嫌な顔をする。

「私が無理に聞き出してやったんだ。おどしてっ。」

「うん。ギルが自分から話すわけないよ?」

 ムッ。

 何だ、その信頼は。
 そう思うとアリスは自分の立場が下がった気がして、憮然としながらツカツカとオズに歩み寄った。

「親には愛されなくてはいけないのか。」

「さあ…? いいんじゃない? 別に。」

「じゃあ何でそんな変な顔をしてるんだお前。」

 アリスがピッとオズの顔を指差すと、彼は幼い子のようにキョトンとした。

「へん…な顔?」

「ああ、変だ。笑ってるのに笑ってない。」

「ハハ…そっ…か…な…。」

 またオズは笑って、ポリポリと人差し指で頬を掻く。

「ほら、その顔だ。」

 オズは困って、首を傾げて笑顔を見せた。

「そんなことないよ?」



 バコンッ!!



「ってっ…」

 アリスが思いっきりオズの頭を叩いたのだ。

「気に食わんっ!」

「えっ? ちょ…」

 オズはまた殴られるかと身を引く。

「この私がこうして心配してやっているというのに、なんだその顔は!」

 アリスのその言葉に一瞬止まり、オズはまたニコッと彼女を見た。

「心配、してくれるんだ?」

 ぷいっと横を向く彼女。

「…う、うるさい!! とにかく!…ハナシを…聞いてやらなくも…ない…。」

 さらにくしゃっと笑うオズ。

 照れ笑いのような風で、彼は話し出した。





 別に、愛してるって言ってくれなくてもよかったんだ。

 いや、嫌われてたって良かったかもしれない。

 ただ、時々でいいからそばに来て、「がんばってるな」ぐらい言ってくれれば。

 …でも、父さんはそんな振りも出来ないくらい、オレを嫌ってたってことなんだ。

 理由は分からない。

 だから何度も夢で見たよ、あの頃。

 父さんと向かい合って座ってて、聞くんだ。
「どうして?」って。

 でも、父さんは笑いながら答える。
「お前だからだよ。」

 だからどうして?ってまた聞いても、
「お前がお前だからいけないんだ。」

……だからさ。

 だから、オレはオレである限り、父さんには嫌われるしかないんだ。




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