ガンダムSEED,DESTINY

□光
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(ドミニオン撃沈時・シリアス)


「撃てー!!
マリューラミアスー!!」


 必死でそう叫んだ後、目を開くと眼前には敵艦からの一射の光が迫る。

 その刹那、

 ナタルは長い夢を見た。





死ぬのだ。

私はここで。

父も母も嘆くだろう。

私が、信念もなくただ敵を殺すだけの軍人に成り下がった事を。



こんな筈ではなかった。
私は父のようになりたかったのだ。

国を守り、家族を守る、公正な父のように。



私は父の背中を追いかけていた筈だった。

なのに…なぜ…?



父の信念は、公正で強固で。

それをマネていた筈だった。

でも私は間違ったのだ。



目の前にあった筈の
父親の背中は
いつの間にかなく、
ナタルはきょろきょろと
辺りを見る。




軍人になるんだ。父さんのような。

なりたいんだ。

本当に?


本当だ。

そう。
なら頑張りなさい。


はいっ。



学生だった頃の
ナタルが、
母親に向けて
返事をした。




見ていてください、母さん。

私も父さんのように、正しい人間になります。



優しい笑顔の
母親を見ていると、
その姿は
徐々に若くなる。
同時にナタル自身も
幼くなってゆく。




母さま、母さま。

私、大きくなるの。

そう。


大きくなって、父さまのようになるの。

大きくなって、母さまのようになるの。

あったかく、優しくなるの。



ナタルは目一杯
両手を広げて
母親を見上げた。
きらきらとした瞳。

優しげな母親の姿は
ふっと宙に消え、
ナタルだけが残される。




母さま? 母さま?



ナタルは駆け出した。
真白な光の世界の中を
一人で走る。




なるの。

私はなりたいものになるの。

大きく、あったかくなるの。

優しく、正しくなるの。

なるの。

なるの。

私は母さまにも父さまにもなる。



ふと、どこかから
聞こえる泣き声に
足を止める。
いつの間にか
すぐそばに男の子が
しゃがみ込んでいた。




「どうしたの?」



泣いている男の子に
尋ねる。




「何泣いてるんだ?」

「ウッ…母、さん…が、ぶった…ヒック」

「お母さんが? どうして?」

「ボクが、コーディネイターになりたいって…言ったから…。」

「…コーディネイターになると、何がいいんだ?」

「強いんだ。賢いし…。だからいつもボクは負けるんだ。」

「でも…知らないのか? コーディネイターって、なりたくてもなれないんだぞ?」

「知ってるよ、そんなこと! でも負けたくないんだ! なのに…母さんは…」

「ぶったのか?」

「うん。」

「…お母さんは…、優しいんだぞ?」

「嘘だ。」

「お母さんは、あったかいんだ。」

「嘘だ。母さんは冷たい。」

「本当だ。」

「嘘だ。」

「本当だ。私はお母さんになるんだ。大きく、あったかく。」

「ちっさいくせに、なれるもんか。」

「なるんだ。大きく、優しく。」



まだ涙の残る少年を
ナタルは抱き寄せた。




「よしよし、いい子。」
「バカ、離せよっ。」

「子供はおとなしく甘えるんだぞ?」

「うるさいっ。離せっ。」



何かが聞こえ、
ナタルは
少年を抱き締めたまま
宙を見る。




「あ、また誰かが泣いてる。」

「違うよ。あれは、喧嘩してるんだ。」



少年の手を引き、
声の方へ走る。

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