ガンダムSEED,DESTINY

□大晦日
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(連合組・if story短編・季節フリー)


 カチャッとドアが開き、入って来たのはアズラエルだ。

 パンパン、と手を打つ。

「はい皆さん、準備は出来てますね?」

 その部屋にいた面々は、互いに着ている服のチェックをしていた。

「ああ、問題ない。いいな、みんな。」

 ナタルの呼び掛けに、それぞれOKを出す。

 アズラエルは皆をひと通り眺めてから、満足げな笑みを浮かべた。

「素晴らしい、皆さん似合ってますよ? 特にシティエとラウリィ、君達には何を着せても似合いますねぇ。」

 褒められた二人は、照れてぎこちなく笑った。

「…でも、この服、慣れてないから動きづらくって…」

「…うん、ちょっと苦しいし、な。」

 その部屋にいるメンバーが着ているのは着物だ。

 この日の為に、アズラエルが準備していたのである。

「キモノ、キレイ…」

 ステラは自分の着ている振り袖の柄を見たり、くるくると回ってみたりしている。



「おいっ!!おっさんっ!!」

 そこに来たのは、オルガ、クロト、シャニ。

「何だよ、この服っ!!さみーじゃんかっ!」

「…こごえそう…」

 入って来るなりそう言うと、それぞれ身を縮めてぶるぶると震えた。

 それもそのはず。

 三人が着ているのはたった一枚。しかも寸足らずでスネが見えている。

「おやあ? これは…私とした事が、とんだ失敗をしてしまった様です。」

 アズラエルが口の端を上げてそう言った。

 ナタルがボソッと呟く。

「それは…ゆかた、だな。」

「ゆぅ〜かぁ〜たぁ!?」

 震えながら、オルガが聞き返す。

「夏に着る着物だ。」

 何──!!と三人は怒り出し、アズラエルに文句を言い始めた。

 それを眺めながら、ラウリィはひとつの疑問を納得に変える。

 自分の着ているものと、オルガ達の着ているものの違いは、夏物と冬物の違いなんだな、と。



「やってられっかっ!! オレ達は行かねーからなっ!!」

 ひとしきり文句を言った後、三人は出て行った。

 アズラエルは肩をすくめる。

「おやおや、折角そろって初詣に行こうと思ったのに。仕方ありませんねぇ。」

 その姿を見ながら、ナタルは溜め息をついた。

(…絶対、わざと間違えたな、コイツ。)



 そこにアウルとスティングが来た。

 二人も、きちんと着物を着ている。

「早く行こーぜ。除夜の鐘、鳴り始めたぞ。」

 スティングがドアを開けたまま待っていると、アウルが声を上げた。

「おー、みんなキレイじゃん。ずりーよ、なんでボクらのはこんな地味なわけ?」

 アウルは自分の着物と皆の着物を見比べる。

 そこでやっとラウリィは気付いた。

「ちょっと! 待て!」

「何です? ラウリィ。」

「もしかして、これ……女物?」

 そう、ラウリィの着ているのは、振り袖だった。

 ナタルが事も無げに言う。

「何だ、知らなかったのか。」

「ナタルさん、知ってたの!?」

 詰め寄るラウリィをなだめる様に、両手を広げる。

「だ、だから、何度も確認しただろう? これでいいのかって。」



 着付けを知っていたナタルが皆に着物を着せたのだが、ラウリィにはしつこく聞いていたのだ。

「本当にこれを着るのか?」「いいんだな? これで。」

 そして聞かれる度にラウリィは、

「いいよ。」「あの人が用意してくれたものだし。」
と答えていた。



「だって! 女物だなんて知らないよっ!」

 怒るラウリィの後ろで、アズラエルが楽しそうに笑う。

「いーじゃないですか。似合ってるんですから♪」

「良くないっ! 着替えるからなっ!」

 出て行こうとするラウリィの背中に、アズラエルは言葉を投げ掛ける。

「それを脱ぐなら! …お年玉は無しですよ?」

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