ガンダムSEED,DESTINY
□お父様とお呼びっ!!
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(ギャグ・ラウのムウいじめ・BL気味かもしれない)
あの日、あの時、あの場所で。
「こんなOSで
こんな質量を
動かそうなんて!」
キラくんが、あっさりと。
「なんで戦争なんか!」
あんな事を言うもんだから…。
「ボクは民間人です! 戦う意思はありません! 攻撃をやめて下さい!」
あれよあれよと言う間に、アークエンジェルは拿捕され、
オレ達はザフトに捕まってしまった。
民間人の子供達はともかく、船の乗員は捕虜にされただろう。
しかし、オレだけは独房に入れられ数日が経った。
おまけに、宿敵であるラウ・ル・クルーゼが毎日やって来る。
しかも下らない理由で、だ。
いや、あいつがオレを目の敵にする理由は分かった。
同情もするし、オレだって親父には少なからず恨みを持っているのだから、あいつに共感できる部分だってある。
しかし…。
でも…。
だからって…。
「いくらなんでも、この扱いはないだろう!?」
オレは両手首を体の後ろで縛られ、独房の床に転がされているのだ。
ラウが来る度、文句を言ってみるが…虚しい。
何せ確実に、あいつのやりたい事は、オレをいたぶる事でしかない。
「なー、いい加減メシぐらいくれよっ! もー死ぬぞっ! 捕虜をゴーモンしていいのかよっ! お前、仮にも士官だろ!?」
オレがそう言うとラウは口の端を上げ、フッと笑った。
「残念だが、ムウ、君は捕虜ではない。アークエンジェルの乗員名簿にはまだ君の名前がなかったからな。…つまり、君は今、ここに存在しない事になっている。」
何!?
「つまり、君は私の個人的なペットの様なものなのだよ。」
く、ちくしょうっ!
でも、何とか食い下がらねば。
「だからって、ここでオレが空腹で死んだりしたら、お前だって後味わりぃだろ? オレが飢え死にするのが望みか? それより戦って勝ちたいんじゃないのか?」
いくらコーディネイターでオレより頭がいいとは言え、人生経験じゃオレの方が勝ってるハズだ。
数年分の経験値で上を行ってやる。
「な? お前が戦いたいと言うなら何度だって付き合ってやるし、憎い親父の悪口だったら延々聞いてやる。何なら憂さ晴らしに付き合ってもいいぜ?」
床に転がったまま、オレが顔を上げてそう言うと、ラウはまた、ニヤッと笑った。
「ムウ、君は何か忘れてはいまいか? なぜ、君がそんな格好で床に転がらなくてはならないのか、もう一度思い起こすがいい。」
うっ…嫌な話題フリやがってっ!
…こうなったら黙秘だ。
「ん? 思い出せないのかな? なら、思い出させてあげよう。ほうら、見ろ。食事だ。私はこうして毎回君の為に食べ物を運んで来ている。最初の日はキチンと3回。」
どうだ?と言いたげなラウの笑みを避けて、オレは横を向いた。
ラウは楽しそうに続ける。
「なのに、それを拒否したのは君じゃなかったかな? そう、私はある条件を提示し、君がそれを飲めば、食事も自由も与えると言った筈だが?」
飲める条件ならな。
「簡単なことじゃないか。“言葉”を変えればいいだけなのだから。命を賭けてまで拒否する事ではあるまい?」
い・や・だ!
「もう空腹も限界だろう? ほら、この肉は美味いぞ? 私もさっき食べたが、ナイフの入りも良くて、口に入れるととろけたぞ? ジュワーっとそれはもう極上の肉汁が口中に広がって…」
「うわ───!! 言うなっ! 余計に腹が減るだろうが!!」
「なら、言え。」
うっ…。
「ほら、ムウ。たった2音、口から出せばこれが食べられるのだよ?」
うう…。負けそうだ…。
「言ったろう? 私は君の父親のクローンだ。遺伝子レベルで、私は君の父なのだよ。ほうら、ムウ、これが食べたければ言ってごらん。“パパ”と♪」
「オレは親父の事をパパなんて呼んだ事ねぇんだよっ!」
「過去の事は知らないが、今、私が、パパ、と呼んで欲しいのだよ。ほら、今、発音はしただろう? その調子で呼んでごらん♪」
……。
「…また、お預けがいいのかな?」
うっ…ダメだ…もう…限界…。
「パ…パ…」(←抑揚なし)
言った…言ってしまった…。
しかし…これで食事にありつける…。