その他
□契約
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「ふうん。」
アリスは椅子の上で膝を抱えて聞いていた。
「で、一人ぼっちだったのか?」
え、とオズは少し考えた。
「メイドは居たよ、そばにいつも。ギルも居たし、伯父さんも居たし…。」
「……ナンダ…。」
そう呟くと、アリスは不服そうに言った。
「一人ぼっちじゃないじゃないか。周りにそれだけ人がいて、何を贅沢な。たかだか父親一人に嫌われただけだろう。バカみたいだ。心配して損した。」
「え…、あ、…うん…そっか…そだな…。」
オズの何か納得のいかない顔を見て、アリスは「はは〜ん。」と得意げに言った。
「つまりあれか。メイドだのアイツだのは大した価値じゃないってことか。あんなのに愛されても、父親に嫌われたことの方が大きいって事だな。うん、そうか、分かった。よし、そーなら決まりだ。」
一方的なアリスに気圧され、オズは何も言えない。
「お前が沈んでいては私の記憶探しに支障を来たすからな。」
また、アリスはピシッとオズの顔を指差す。
「私がお前を愛してやる! 主であるこの私が、下僕でしかないお前を愛してやろうと言うのだ。喜べ。」
オズは再びきょとん顔になった。
「は…?」
「何か不満があるとでも言うのか。」
ぷーっと怒った顔でアリスが問う。
「え…っと…。」
「この私が愛してやれば、父親など取るに足らんだろう。いいな! 私が愛してやるんだからっ! 変な顔はキンシだ!!」
「え…う…うん。」
きょとん顔のまま頷く。
アリスは満足気に笑った。
「新たな契約が成立したところでひとつ聞くが、…愛する、とはどうすればいいんだ?」
……。
「…やっぱり?」
オズの呟きにカチンと来て、アリスはまた怒り出した。
「何がやっぱりだ!! 下僕! きちんと答えろ!!」
オズはアリスに気づかれないように小さくため息をつき、返事をした。
「ずっと傍にいる、とか…。」
───ん?
「守ってやる、とか…。」
───あれ?
「えっと…。」
言いながら自分で気が付いたことが…。
アリスはふふんと笑った。
「何だ。どっちもいつもやってるじゃないか。」
ホントだ、と思いながら、オズは慌てて付け足した。
「あ、あと、抱きしめる、とか、キスする、とか。」