すばらしきこのせかい

□ゆっくりしていってね!!!
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(ヒサタカネタ/ネクとシキとヨシュアとビイト/BL的表現を含む)



「あ、ネク!『グランド』には行かないの?」

後ろからシキに呼び掛けられて、カドイを出ようとしていたネクは足を止めた。
中途半端に振り返って答える。「いかない。」

「え、何?なんでそんな嫌そうな顔してるの?」

その言葉には返さず、ただ溜め息をつく。彼女に対しての物ではなかったのだが、あまりに不快そうな態度に「えっと…ごめん」と理由もわからないままシキは謝った。
もういいかと言うようにネクがまた歩き始めてすぐ、ヨシュアが口を開いた。

「ネク君は、あそこの店員に会いたくないんだよね」
「えっ?そうなの?」

そうでしょ?もう一度振り返ったネクにヨシュアは言う。

「…ああ」
「どうして?ネクってあの人に好かれてたよね?」
「正しい好かれ方じゃあないからじゃないかな」
「そういう勘違いさせるようなこと言うな。馴れ馴れしくされるのが嫌なだけだ」
「正しくない好かれ方…?」

フォローをいれてももう遅かったらしく、ビイトも頭を掻きつつ「なんだそれ」と考え始めていた。
ネクはヨシュアを思い切り睨んだが、彼は楽しそうに片手を上げただけだった。

「それって、お客として好かれてるわけじゃないってこと?」
「フフ…どうかな?」
「お客じゃなくてネクが嫌がる好かれ方だから…」
「食いもんか?」
(いつか食われるのか俺は…)

どうしてそうなるんだと溜め息をつくが、横でヨシュアが「いいセン行ってるね」と事をややこしくする。
「食べ物系?」若干的外れなシキの推理に彼は「斬新な切り口だ」といつか聞いた言い回しで答えた。

「ネク君はどう思う?」
「俺に聞くな」
「うーん、それはいいけどさ、『グランド』行こうよ。私あそこで買いたいものがあるの」
「………」

ネクはしばらく考え込む。その間ビイトとヨシュアが先程の「正しくない好かれ方」についてやりとりしていたが、聞こえていないようだった。

「……わかった」
「本当!?ありがとう、すぐ済ませるから!」

そうと決まればといった感じでシキが二階に続くエスカレーターの方へ向かう。そのすぐ後ろをシキに呼ばれたビイトが走り、ネクとヨシュアはさながら保護者のように二人を見送りながら歩く。
ヨシュアが含み笑いを浮かべ、ネク君はシキちゃんには甘いよねと言った。

「…ほっとけよ」
「嫉妬しちゃうなあ。……ヒサタカ君が」
「もうその話はいいだろ」


「グランド」に着くと、案の定ヒサタカは目敏くネクを見つけて話し掛けてきた。

「来てくれたんだ!待ってたよ。そうそう、君に似合いそうな服入荷しておいたんだ。着せてあげるから試着しない?」
(早くこの店消えてなくなれ…!)


ゆっくりしていってね!!!

やっぱりというか、このあとネクは一時間カドイから出られなかった。


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企画「どうしてこうなった」のお題「ゆっくりしていってね!!!」で書いたもの。
「グランド」は何階にあるのか確認していません。
ヒサタカ怖いよヒサタカ


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