ガンダム00
□蟻×刹
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(BL・蟻刹・シリアス)
***熱砂の記憶***
刹那は逃げ惑っていた。
訓練と称して始まった鬼ごっこは、命懸けだった。
“鬼”役であるサーシェスは、銃を持ち子供たちを追う。
あちこちで銃声と友達の悲鳴が聞こえた。
サーシェスが本当に子供たちを殺すわけはない。
子供とはいえ、大事な戦力なのだから。
でも、そんなことは子供たちには分からなかった。
刹那は砂漠を走った。
もう他の子供の声は聞こえない。
逃げても逃げても追って来る。
相手は大人だ。走りもせず余裕で。
砂に足を取られ転がるように低い所まで落ち、顔を上げると、数m先にサーシェスが立っていた。
ニヤッと笑い、銃を持ち上げたのを見て、刹那は飛び出した。
「うわーあ!!」
叫びながらサーシェスに向かって行く。
サーシェスは面白そうに「お?」と声を出し、足を踏ん張った。
ガシッとタックルをするように、ぶつかって行く刹那。
「おーおー、やるねえ。向かって来たのはお前が初めてだ。」
軽く刹那の動きを封じ、サーシェスは髪を掴んで顔を自分の方に向けた。
「いいじゃねーか、その目。気に入ったぜ。だが、これで終わりだ。ジ・エンド。じゃーな、サ・ヨ・ナ・ラ。」
こめかみに当たる銃口。
サーシェスの不敵な笑み。
引き金にかかる指の動き。
それらを体中で感じ取り、刹那はそこで失神した。
「…ああ、もうちっとやる事あっからよ。そっちのガキ共は任せたぜ。」
目を覚ますと、サーシェスは無線で連絡を取っていた。
広い砂漠の中、波打つようにうねった地形の窪みに布を被せて陰を作る。
刹那はその中にいた。
そう時間は経っていないのだろう。
陰の中の砂は、まだ熱を持っていた。
熱い砂の上に直に寝かされていた為、刹那は汗をかききって、喉がカラカラだ。
「み…ず…」
うっすらと目を開け、サーシェスに向かって手を伸ばす。
無線を切ったサーシェスがそれに気付いた。
「お、目ぇ覚めたな?」
そう言って彼も陰に入り、刹那のすぐそばに座った。
「み…ず…くだ…さ…い。」
「喉が渇いたのか?」
こくんと頷く。
彼が腰の辺りから水筒を出すのを見て、刹那はゆっくりと体を持ち上げた。
起き上がった刹那の顔の前で水筒を振って見せる。
渡してくれるのだと思った刹那は、受け取る為に手を出した。
すると、サーシェスは笑った。
ニヤッ。
ひょいっと刹那の手を避け水筒を開けると、水を自分で飲み始めた。
「あっ!」
水筒の傾きで、もう残りが少ない事が分かる。
「僕もっ!」
サーシェスの上衣にすがるように掴まる刹那。
それを横目で楽しそうに見下ろしてから、ポイッと水筒を投げた。
刹那は、慌ててそれを拾って口に当てる。
しかし、もう水は残っていない。
「あ…。」
泣きそうな顔でサーシェスを見上げる。
と、突然彼は刹那を引き寄せた。
「!?」
次の瞬間、唇が合わさっている事に気付いて呆然となる刹那だったが、そんな事よりも、水が口に入って来た事が嬉しかった。
「ぷはっ!」
苦しさに息を吐くと、サーシェスは、ふん、と鼻で笑う。
刹那はなんとなく腹が立ち、ムッとした。
何にしても、水分を補給する事は出来た。
これなら村まで歩く事が出来る。
少し気も落ち着いて、刹那は立ち上がった。
立ち上がって動ける事を教えたつもりなのに、サーシェスが動こうとしない。
さっきの事もあり、あまり喋りたくなかったが、おずおずと尋ねてみる。