ガンダム00
□笑顔
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(ニールの過去/シリアス)
テロで家族を失って、俺は悲しいのと同時に途方に暮れていた。
葬儀を終えると、ライルはあまり会話をしないまま、寄宿舎に帰るからと出ていった。
まだジュニアスクールに在籍していることもあり、家族で暮らしていた家で一人で暮らすと言った俺の希望は聞き入れられなかった。
唯一の親戚である、母方の叔母夫婦の世話になることになってしまった。
叔母には子供がいなかった。
どうやら、夫婦そろって子供嫌いらしく、そう言えばあまり付き合いはなかったなと思い出す。
「子供扱いする気はないわよ。」
冷たい口調でそう言われ、俺は結局一人暮らしするのとそう変わらない生活をすることになった。
叔母は単に世間体を気にして俺を引き取っただけだったらしい。
自分の事は自分でしろ。
困りごとを持ち込むな。
確かに子供扱いはしないのだろう。
しかし、口調はいつも命令形だった。
食事の時にお祈りをしようとすると禁止された。
俺の両親は敬虔なクリスチャンだったが、叔母夫婦は神様なんて信じないと言っていた。
「毎日お祈りをしていたアンタの家族は、テロで死んじゃったじゃない。私達はお祈りなんてしてないけど生きてるわ?答えは出てるわよね。」
悔しかったが、俺も納得してしまった。
神様はいないのかもしれない。
「辛気臭いわね。そりゃ可哀想な境遇だと思うけどね。いつまでも可哀想可哀想なんて言って貰えると思ったら大間違いよ?大人はみんな辛いことがあっても表では笑ってなくちゃいけないのよ。慣れておきなさい。」
俺がいつまでたっても暗い顔をしているのを見て、叔母はそう言った。
叔父もこの上なく迷惑そうな顔をした。
「お前がいるだけでこの家が暗くなる。人の家庭を壊すようなことをするな。」
すみません、と謝る他なかった。
口答えをすれば、好きでお前を引き取ったわけじゃないと返される。
さらに、じゃあやっぱり一人暮らしをすると言えば、お前は私たちが後ろ指を指されるような事を平気でするのかと返ってくるのだ。
「笑いなさい。」
叔母に言われ、無理やりに笑った。
そんな家で過ごすうち、俺は妙に人に愛想を振りまくようになっていた。
誰にでも笑いかければ人が集まるようになり、人に囲まれれば嬉しくてその『仲間』を大事にしようと思うようになった。
うまく人付き合いが出来ていると思っていたのだが、ハイティーンになると少々困った事も出てきた。
俺がむやみに笑顔を向ける為、時々女性には誤解をされることがあった。
告白を受けてそんなつもりはないからと断ると、向こうは断られることは想定していなかったらしく、ほとんどの場合罵られるか陰で酷いふり方をしたと囁かれた。
仲間だと思っていた相手にそんな風に言われてしまう事が怖くなって、断るのをやめてからはまた状況が悪くなった。
気が付けばいつの間にか、複数の女性と付き合っている事になっていた。
そして、相手から「私が一番よね?」と詰め寄られれば違うなんて言えず、ニコッと笑って頷いてしまう。
一度、男の後輩の悩みを親身になって聞いていたら、ソイツから告白されたことがあった。
流石にそれは断ったが、やはりソイツも酷く罵ってきた。
「誰の誘いでも全部受けるくせに、どうして僕だけダメなんです!?僕が男だからですか!?」
その言葉には、そうだよ男だからだよ、と返したかったが、泣きながら詰めよって来る相手には言えなかった。
その時は、すまない、と謝ってその場から逃げだした。