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□MAN?WOMAN?
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「今日からお世話になります、観月です。よろしくお願いします」

土曜朝9時。

北海道某所、開店前のファミリーレストラン“ワグナリア”

今日から始まるこのバイトで、また彼に会えるなんて思いもしなかった。






「観月はキッチン担当だ。フロアの人が足らないときはフロアの仕事をしてもらう。とりあえず佐藤、お前に新人任せるから。厨房のことは頼んだぞ」

愛想のない店長が、厨房に入るなり私の説明を始める。

「観月は以前、喫茶店で料理経験があるから役に立つと思うぞ」

そう言いながら彼女は厨房を後にした。なんだろうあの人…、あんまり馴染める気がしないんだけど…、怖くて。






「俺は佐藤潤だ。教えるからには容赦しねーからそのつもりで」

「……?あっ!」

「は?

「あ、いえ、なんでも…」

どこかで見たことあるかと思ったら…そっか…。




「佐藤くんってば新人さん怖がってるんじゃないのー?俺は相馬博臣。よろしくね〜」

背の高い無愛想な金髪の青年と、それとは逆に笑顔を絶やさない人のよさそうな青年が私に自己紹介をする。相馬、と呼ばれた彼にいきなり手を取られ握手される。

「こ、こちらこそよろしくお願いします…」

「(にこにこにこ)」

あ、あれ?なんで手を離してくれないんだろうこの人…。

「相馬、いつまでも男の手なんか握ってねぇで早く仕込みしろ。」

男の手…ですか…

「とりあえず、研修のお前がやる仕事を一通り言うから頭に入れろよ」

「あ、はい…」









私の名前は観月優。高校三年生。

実は佐藤さんとは前に一度だけ会ったことがある。まぁ、彼が私の事を「男」だと言った時点で、彼が私を覚えているという説はなくなったわけだが。


まずは私が男に間違われたいきさつを。

一応、三姉妹末っ子のれっきとした女。なんで私が男に見間違えられるかっていうと。それは両親の育て方にあった。

三人も娘がいるとやはり息子が欲しかったようで。そのせいで私は物心着く前から男の子の服を着せられ、スポーツを習い、思春期になった私は中身こそ女であれど、容姿にいたっては男の格好をすることにまったく嫌悪感も感じることなく、男として育てられた。
むしろ、あまり外見に関して人以上に興味がわかず、服装が女であれ男であれどっちでも良かった。

実際、私が通う高校でも、私が女であるという事実を知らないやつもいる。

別に女であることを隠しているわけでもないのだが、中・高校の制服も親に勝手に男子のブレザーとズボンを用意され、あたり前のように日々を過ごしていた。(夏場でもベストは義務着用なので胸のふくらみもあまりわからず…)
髪はショートで、伸長も女子にしてはそこそこあり、わりとすらっとした体つきなので違和感はない。

それどころかなぜか女の子にモテるという切ない状況。どうも母性本能をくすぐられるものを持っているらしい。よくわからん。







そんなこんなで、男に間違われるのは日常茶飯事。バイトの面接に来た際も、店長に勘違いされたが彼女は全く動じなかった。たいがいの人が驚くとこなんだけど。彼女は堂々としてるというか…男前というか…本当は私より男らしいのでは。

あ、ちなみに、厨房の制服は男女兼用な上にだぼったいので体のラインは出ない。

まぁ佐藤さんが私を男に間違えるのは仕方ない…か…。








女の子の格好をしたら佐藤さんは、あの時の私を思い出してくれるのかな…




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