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□解けそうにない誤解
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「んしょっ、と。」
なにこの仕打ち。佐藤さんってば仕事に厳しい人間だったんだ…(くすん)
「手伝いましょうか?」
「あ、ありがとうございます!あ、えと…」
「新人さんですよね、俺、フロア担当の小鳥遊宗太です。よろしくお願いします」
真面目そうで優しげな表情をした男の子が出勤してきた。フロアは厨房と違って仕込み時間がないので、開店30分前に出勤しているようだ。
私も自己紹介を軽くすませ、二人で荷物運びをすすめる。
途中、小鳥遊くんが思い出したのか、
「あれ?よくここに客として来てませんか?」
と切り出された。
「よく覚えてますねー」
「女の子とよく来てましたよね、」
「まぁ…」
「しかも女の子をとっかえひっかえ」
「……え?」
なんだろう、小鳥遊くんの視線が心なしか冷たくなった気が。
あれ、この流れ…。私を女ったらしのチャラ男だと思ってる感じ?
「女にモテんのはわかったが仕事はすすんでんのか」
「わっ」
「あぶねっ」
不意に私の背後に現れたのは佐藤さんで、びっくりした私は段ボールをかかえたまま、後ろによろけてしまう。
こける…!
そう思った瞬間、佐藤さんがこけそうになった私の体を支えてくれていた。
後ろから抱きしめされるような形で。
「…っ…///」
急に抱きしめられた私は思わず顔を赤らめる。いや、抱き締められたわけではないけども…!
「ったく危なっかしいな」
私の体から手を離した佐藤さんは、私が持っていた段ボールをひょいと持ち上げた。
「これで最後だろ。お前は相馬の仕込みの手伝いしてこい」
「はいっ」
ドキドキがまだおさまらない…。男友達となんて普通にからんだりするのに…。どうしちゃったんだろう、私…。
ってあれ?
結局、小鳥遊くんと佐藤さんに私は女ったらしだと思われたままじゃ…?