短編
□だって。
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『たきー。』
忍たま長屋に、私に会うために来てくれたというなまえが間延びした声で私を呼ぶ。
私は輪子を磨く手を止める。
「なんだ、なまえ。」
私は大体知っている。
この喜八郎のような間延びした声のときは、なまえはすこし機嫌が悪い。
だが本当に機嫌が悪いと口を聞かないくらいなので、可愛いものだろう。
『・・・輪子ちゃんがそんなに好きなら、輪子ちゃんと結婚しなさいよ!!』
何を言い出すかと思えば、何を言いだすのだ。
「何を言っているなまえ。私はなまえのことが好きなのだぞ。」
不機嫌ななまえをなだめるためになまえの前に座り、ちゃんと話を聞いてやる。
『わっ、私だって滝が好きだけど・・・』
声がだんだん小さくなっていくが、きちんと聞きとれる。
「けど?」
私が首を傾げると、それがなまえの逆鱗に触れたようで、真正面で怒りながら泣きだした。
『私だって滝が好きだよ!!
大好きだけど、けどっ・・・滝は折角会いに来ても、輪子ちゃんばっかり構ってる!!!
もう知らない!!輪子ちゃんと結婚すればいいわ!!お幸せに、平輪子ちゃん!!!』
一気にまくし立てた後、うわぁんと泣きだすなまえ。
・・・・まったく私のなまえは可愛いものである。まぁ確かに私は美しく且つ優秀で戦輪も学園一だろうし、あぁ、話がそれてしまったが、私はそれだけ出来た人間だ。
だが
「・・・私は、なまえがいないとダメだ。なまえと結婚したいのだが?」
私に欠けているものは今まで無かったが、なまえと出会ってから、欠けていた物が何なのかを知ったのだ。
『っ////』
顔を真っ赤にして驚くなまえ。
「だめか?平なまえじゃ。」
いたずらっぽく笑うと、なまえは顔を真っ赤にしながら怒っていたが、それが照れ隠しなのを私は知っている。
真正面から優しく抱きしめてやれば、ほら、素直になる。
『・・ごめんね?滝』
「そんなことはないさ。」
私を必要としてくれるなまえは何より可愛い。
(( だって、好きなんだもの ))